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6 剰余類 | ![]() |
f-denshi.com 最終更新日: 04/02/29 | ||
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このページでは同値関係,もしくは類別と呼ばれる方法で,正四面体群を共通部分のない部分集合に分割することを学びます。また,この部分集合の性質から部分群が特徴づけられることを学びます。
[1] 任意の集合の二つ元の間に定義される関係のひとつに同値関係があります.同値関係の定義は以下の通りです。
定義 集合の元の間に定義されるある関係 〜 が任意の元 a,b,c について次の関係を満たすとき,関係 〜 を同値関係と呼ぶ。 (1) a 〜 a |
ここで,a 〜 b は「a と b は( 関係〜において) 同値である」と呼びます。
例として日本人全体の集合を考えて,同値という言葉を「血液型が(ABO方式で)同じ」と読み替えてみるとよいでしょう。すると,
(1) a さんの血液型は a さんと同じ
(2) a さんの血液型は b さんと同じ ⇒ b さんの血液型は a さんと同じ
(3) a さんの血液型は b さんと同じ,かつ,b さんの血液型は c さんと同じ ⇒
a さんの血液型は c さんと同じ
となります。すなわち,日本人の集合において,「血液型が同じ」という”関係”は同値関係になります。さらにこの例でわかるように,日本人ひとりひとりは必ずある血液型の集合のどれか一つだけに属していますが,一般に,
「 同値関係を用いると,集合を共通部分のない部分集合に分割することが可能 」
であることが示せます。このことを次の定理としてまとめておきます。
定理 同値関係 〜 の定義された集合 G は次の二つの条件を満たすような共通部分のない部分集合の和,H1U H2U・・・・・U Hn に分割することができる。 (1) i≠j ならば,任意の a∈Hi,b∈Hj について a 〜 b は成り立たない。 |
このような分類を類別といい,上の Hj ひとつひとつを同値類といいます。 また,
H〜 ≡ {H1,H2,・・・, Hn}
を商集合とか等化集合と呼びます。
証明
Ha∩Hb≠φ ⇒ Ha=Hb を示せばよいでしょう。
∃g ∈Ha∩Hb つまり,g〜a,a〜g かつ,g〜b,b〜g となる g が存在するとします。
(1) 任意の x∈Ha について,
x〜a,a〜g ⇒ x〜g ⇒ g〜x
一方,
b〜g,g〜x ⇒ b〜x ⇒ x〜b ⇒ x∈Hb
すなわち, Ha⊂Hb であることが分かった。
(2) a と b を入れ換えて,(1) と同様に考えれば, Ha⊃Hb を示すこともできる。
(3) (1) と (2) より,Ha∩Hb≠φ ⇒ Ha=Hb が証明された。
[1] (矛盾が生じないように) 群に次のように同値関係 〜 を導入することができます。
定義 群 G の元 a,b について,G の部分群 S を用いて, a = b ・ s, ∃s∈S が成り立つとき, a 〜 b と定義する。すると,〜 は同値関係である。 ここでは群の演算 ・ は省略しないで書いてますが,省略しても構いません。 |
このような同値関係で,先に求めた正四面体群 G を類別してみましょう。
類別に用いる部分群 S を,S1={e,a1,b1} とします。 まず,正四面体の群表より,
x・s, s∈S1={e,a1,b1}
の演算結果を抜き出します。
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並び替え ⇒ |
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xS1={x・s|s∈S1} [左剰余類]
と定義することにします。例えば,上(左)の右表の1行目の部分は,
a1S1={a1・e,a1・a1,a1・b1}={a1,b1,e} ( =E とおく )
となります。さらに 2,3 行目を調べると,
b1S1={b1・e,b1・a1,b1・b1}={b1,e,a1}
eS1 ={e・e,e・a1,e・b1} ={e,a1,b1}
となり,これらは1行目と同じ集合,E であることがわかります。同様に
a2S1=b3S1=hzS1={a2,b3,hz}=Z
a3S1=b4S1=hyS1={a3,b4,hy}=Y
a4S1=b2S1=hxS1={a4,b2,hx}=X
となり,結局,x・S1を考えることで, G は4つの部分集合 E,Z,Y,X へ分割されます。この分割方法を G の「 S1 による同値類別 」と言います。そして,これら4つ部分集合の集合(等化集合)を G/S1={E,Z,Y,X }と書いて, ”GのS1による等質集合” ともいいます。
ほとんどの教科書では,同値類に対して,X,Y,・・という記号を使わずに,a4S1,a3S1,・・のようにそのまま書きます。そして,左に表記する a4 などを同値類 X の代表元といい,その集合{a1,a2,a3,a4}を代表系といいます。
そして,a4S1 を「a4を含む同値類 」,または「a4を含む左剰余類 」と呼びます。もちろん,a4 でなくとも b2,hx も X の代表元に選べるので,一つの同値類の表記方法は一意的ではありません。
[3] この分割が元を同値なものどうしに分類しています。たとえば,X={ a4,b2,hx }に属する元が互いに同値関係にあることは,適当な s∈S1 を選べば,
(1) a4=a4・e [ a 〜 a ]
(2) a4=hx・a1 ⇒ hx=a4・b1 [ a 〜 b ⇒ b 〜 a ]
(3) a4=hx・a1,hx=b2・a1 ⇒ a4=b2・b1 [ a 〜 b,b 〜 c ⇒ a 〜 c ]
(e,a1,b1∈S1)
と確かめられます。
したがって,G は S1 によって,
G ={a1,b1,e}∪{a2,b3,hz}∪{a3,b4,hy}∪{a4,b2,hx}
= a1S1 ∪ a2S1 ∪ a3S1 ∪ a4S1 ・・・・・[*]
というように,重複も余すこともなく異なる4つの同値類 (左剰余類) の和で表せます(=類別されています)。
[4] G の S1 による同値類別によって得られる同値類の個数を 「 G における S1 の指数」 といい,
|G:S1|=4
のように書きます。そして,Gの位数|G|と,S1 の位数|S1|とのあいだには,
|G|=|S1|×|G:S1|
12 = 3 × 4
が成り立ちます。
[5] 単なる表記法の問題ですが,G の S1 による類別を,
G=a1S1+a2S1+a3S1+a4S1
=S1+a2S1+a3S1+a4S1 ← a1S1=S1 ⇔ a1∈S1
=S1+hzS1+hyS1+hxS1
=・・・・・・・・・・・・・・
と,+記号と代表元を使って書くこともあります。これは[*]と同じ意味です。
また,次の命題はしばしば証明に利用されます。
命題 群 G の部分群を S , a-1,b ∈G について, a-1b ∈S ⇔ b ∈aS |
ある s∈S が存在して, a-1b =s ⇔ b=as であることからわかります。
x∈A4 の互換,巡回置換を用いた表示 e e a1 (234) b1 (243) hx (13)(24) a2 (143) b2 (134) hy (12)(34) a3 (124) b3 (142) hz (14)(23) a4 (132) b4 (123)