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6 ベクトルの基底変換・座標変換 | |
f-denshi.com [目次へ] 最終更新日:07/10/20 | ||
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反変ベクトル,共変ベクトルの区別がない3次元ユークリッド空間の座標変換については,を Appendix1 を参照してください。
[1] 3次元ベクトル空間 V の基底(=座標系)が変われば,それに応じてV の元x の(成分)座標も変化します。ここでは基底Σ からΣ 'への変換(=基底どおしの関係)が与えられたときのベクトル成分間の変換式を導きます。
考えている異なる2つの座標系の基底を,
Σ ={ e1, e2, e3 }
Σ' ={e'1,e'2,e'3 }
とします。また,あるベクトルx をそれぞれの座標系で,
x = x1 e1+x2 e2 +x3 e3 (座標系Σ)
= x'1e'1+x'2e'2+x'3e'3 (座標系Σ ')
とします。問題は,2つの座標系でのべくトル成分
x1 と x'1 との関係式 x2 x'2 x3 x'3
を求めることです。
[2] まず,Σ 'の各基底を構成するベクトルe'j もベクトルの一つですから座標系Σ の基底を用いて一次結合で一意的に表せます。それを
e'j = Σpkjek [ 基底変換 ] |
すなわち, ↑注意:Σ が正規直交基底の場合は,両辺ekとの内積を計算して,ek・e'j =pkj とも書きなおせる!
e'1=p11e1+p21e2+p31e3≡ (p11,p21,p31)
e'2=p12e1+p22e2+p32e3≡ (p12,p22,p32) ← 座標系Σでの座標表示です。
e'3=p13e1+p23e2+p33e3≡ (p13,p23,p33)
とします。この pjk はΣとΣ'が与えられると同時に与えられる(定まる)ものです。
[3] ベクトルx はどちらの基底で表しても同じなので,
x =x1e1+x2e2+x3e3= x'1e'1+x'2e'2+x'3e'3
が成り立ちます。この右辺に[2]で書いたe'1,e2',e'3 を代入してe1,e2,e3 について整理すると,
x1e1+x2e2+x3e3 = (p11x'1+p12x'2+p13x'3)e1
+(p21x'1+p22x'2+p23x'3)e2
+(p31x'1+p32x'2+p33x'3)e3
e1,e2,e3 は1次独立なので両辺の各 ej の係数が等しいとして,
x1=p11x'1+p12x'2+p13x'3
など,すなわち,
xj =Σ pjkx'k ; j = 1,2,3 [ 反変ベクトル変換 ] |
を得ます。
[4] この結果を行列を用いて表すと,
|
ここで,
|
を 座標変換の行列 (または,基底変換の行列) といいます。
[5] 特に,ベクトル空間の基底が正規直交系である場合は,P は直交行列 [#] となります。
詳しくは 固有値論入門: 第6章 「ユニタリ行列」 を参照してください。 ⇒ [#]
(なおユニタリ行列とは直交行列の成分として複素数まで考えたものです。)
なお,最初の[ 基底変換 ]は形式的ですが,「基底を構成するベクトルを成分とする」ようなベクトル ”モドキ” (e'1,e'2,e'3) などを考えてP の役割を下の一覧のように書けることを確かめてみてください。
(e'1,e'2,e'3) =(e1,e2,e3)P : x1 x'1 x2 = P x'2 x3 x'3
e'1 e1 : (x1,x2,x3)=(x'1,x'2,x'3)tP e'2 =tP e2 e'3 e3
(e1,e2,e3)=(e'1,e'2,e'3)Q : x'1 x1 x'2 =Q x2 x'3 x3
e1 e’1 : (x'1,x'2,x'3)=(x1,x2,x3)tQ e2 =tQ e’2 e3 e’3
和記号で書くと,
ej = Σqkje’k [ 基底変換 ]
x'j =Σ qjkxk ; j = 1,2,3 [ 反変ベクトル変換(その2) ]
と Q を用いた表現が得られます。ただし,正規直交系の場合,
Q=P-1 ⇔ q11 q12 q13 = p11 p21 p31 q21 q22 q23 p12 p22 p32 q31 q32 q31 p13 p23 p33
[1] 2つの基底変換の関係式 e'j = Σ pkjek が与えられると,それぞれの基底に対応する双対基底 e'k と ej (←添え字が上がっていることに注意)の間の変換式も
ek (em) =e'k (e' m)=δkm [#] (← ここでもek が線形写像を起源とすることを意識した記号法を使いました。慣れてきたら内積記号で表してもOKです。)
なる関係から一意的に決まるはずです。まず,それぞれの基底系で,Q (=[ qmn ] ) をP の逆行列として,
(e'1,e'2,e'3)Q =(e1,e2,e3) ⇔ Σ e'm qmn = en
と書いておきます。 そこで,これを用いて次の量を計算すると,
Σ pjke'k(en) = Σ pjke'k(Σ e'm qmn )
↓ 線形性と
=ΣΣpjkqmn e'k(e'm )
↓e'k (e'm)= δkm
= Σpjkqkn
↓ Q はP の逆行列なので,
=δjn
これと,e j(en)=δjn とを較べて,
ej = Σ pjke'k ←「'」 がこんどは右辺に移動していることに注意![#]
でなければならないことがわかります。ベクトル空間では基底変換が,ej = Σqkje’k で表されたことを思い出せば,
双対空間での基底変換の行列は,ベクトル空間におけるPをtQを置き換えればよい
ことが分かります。つまり,
以上,まとめると,(同様な計算なので導出は省略します。)
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⇔ 比較 |
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⇔ 比較 |
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[双対空間] | [ベクトル空間] |
最後にベクトル空間と双対空間との関係を一つにまとめると次のとおりとなります。
[ 基底 ]
[ 成分 ]
アインシュタインの規約ではこの表のΣの記号は省略されます。 |
基底変換Σ→Σ’を定める基底変換の行列Pと同じ行列によって変換される成分を共変成分,逆行列Qによって変換される成分を反変成分と呼んでいることが分かります。
P の逆行列 P-1=Q≡ [ qjk ]の成分を用いて,
e'j= Σqjkek
⇔
と書けることを示すこともできます。
e'n = Σpknek を用いると,
Σqjkek (e'n) =Σqjkek (Σpmnem)=Σqjkpkn=δjn
これをe' j(e'n)=δjn と較べれば,
e' j=Σqjkek
を得る。これをベクトル空間における基底変換,e'j = Σpkjek と比較すれば,ベクトル空間のtPが双対空間のQに対応していることを示している。