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9-2 多変数関数の極値問題 | |
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多変数関数の微分係数を計算する最大の目的は,1変数の場合と同様に関数の最大値や最小値を具体的に求めることにあります。ここでは,2変数関数についてだけ説明します。
[1] 2変数関数のテイラー展開を利用して,2変数関数の極値問題を考えてみます。考え方は1変数の場合と同じです。
2変数のC2級関数 z = f(x,y) が,(x,y) = (a,b) で極値をとる必要条件は1変数の場合と同様に1階微分係数が(a,b)
で 0 となることです。特にx軸,y軸に沿った偏微分,
(1) ∂f (a,b)=0, ∂f (a,b)=0 ∂x ∂y
[2] この状況をさらに詳しく調べるためにはテイラーの展開式の2次の項を見なければなりません。(1) が成り立っているとき1次の項は0なので2次の項だけ残り,
f(a+h,b+k)−f(a,b)
= (1/2)[h2fxx(a+θh,b+θk)+2hkfxy(a+θh,b+θk)+k2fyy(a+θh,b+θk)]
↓ k ≠ 0 として,X = h/k と置き換えをすると,
= (k2/2)[AX2+2BX+C] ≡ Y(X)
ただし,
A = fxx(a+θh,b+θk)
B = fxy(a+θh,b+θk)
C = fyy(a+θh,b+θk)
と書けます。Y(X)の値が正であるか負であるかの判定は,X に関する2次方程式の判別式: D = B2−AC を用いて行うことができます。 (この辺は高校生のときにも勉強してますね。)
[3] すなわち,
(a) D<0
ならば,Xの2次関数Y=Y(X)はX軸と交わらないので,
(a1) A>0 のとき ⇒ 常にY(X)>0 ⇒ 常に f(a+h,b+k)−f(a,b) >0
(a2) A<0 のとき ⇒ 常にY(X)<0 ⇒ 常に f(a+h,b+k)−f(a,b) <0
がわかります。つまり,(a) かつ (a1) で極小値,(a) かつ (a2) で極大値をとります。
なおこの判別式中の A,B,C は,fxx,fxy,fyyが連続(C2級関数を仮定)なので,h,k が十分小さいとき, (a+θh,b+θk) での値の代わりに (a,b) での値を用いることができます。すなわち,
停留点が極値となる十分条件 ・極小値をとる: fxx(a,b) > 0,かつ {fxy(a,b)}2−fxx(a,b)・fyy(a,b) < 0 ・極大値をとる: fxx(a,b) < 0,かつ {fxy(a,b)}2−fxx(a,b)・fyy(a,b) < 0 |
判別式が (a) D<0 以外の場合ですが,
(b) D>0 ならば,Y(X)は正,負両方の値をとるので (a,b) で極値をとらないことがわかります。
(c) D=0 ならば,何もいうことができないので,さらに高次の項を考える必要があります。⇒
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[4] 一般的なn変数C2級関数が極値となる十分条件は,ヘッセ行列と呼ばれる次のような行列
H= f11・・・・・11n
, fij= ∂2f = ∂2f =fji ∂xi∂xj ∂xj∂xi f21・・・・・f2n ・・・・・・・・ fn1・・・・・fnn
を考え,その固有値の符号で判断されることとなります。その理解には固有値論の知識が必要です(大学1年生には難しいかも)
ので,こちらを参考にしてください。
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