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5-1 ベキ級数関数 | |
f-denshi.com [目次] 最終更新日:07/06/11 | ||
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テイラー級数展開とは逆の方向から考えてみます。まず,ベキ級数ありきということから。
[1] x の n次多項式で表される関数
fn(x) = r0+r1x+r2x2+・・・+rnxn
において,n → ∞ とした,
rnxn = r0+r1x+r2x2+・・・+rnxn+・・・
を x についてのベキ級数といいます。この極限が x のある区間で収束するとき,その極限の値を
f(x) = r0+r1x+r2x2+・・・+rnxn+・・・・
とおいて,x についてのベキ級数関数といいます。
例えば, 1 =r0 =r1 =r2 = ・・・ =rn ・・・ のときのベキ級数,
1+x+x2+・・・+xn+・・・ ・・・・・・・・・・ [*]
は,-1 < x < 1 のときは収束して,
f(x) = 1 + x + x2 + ・・・ + xn + ・・・ = 1 1−x
と表すことができます。一方, x ≧ 1,x ≦ -1 のとき,このべき級数は発散します。x の範囲をうまく制限することで[*]は有理関数1/(1−x)に収束します。しかし,いつもこのように事が運ぶわけではありません。
[2] x についてのベキ級数関数の収束性の判定については次の定理が用いられます。
ベキ級数の収束 べき級数, が,x = x0 で収束するならば, |x|<|x0|をみたす,すべての x について, (1) r0 + r1x + r2x2 +・・・+ rnxn +・・・ が収束する。 および, (2) |r0|+|r1x|+|r2x2|+・・・+|rnxn|+・・・ も収束する。 [絶対収束] (実は,(2) ⇒ (1) も) |
また,x をいろいろいろ動かしたときの|x0|の上限,
r ≡ sup|x0| [ 収束半径 ]
を収束半径といい,開区間 (−r,r ) を収束域といいます。特にすべての実数について収束する場合,収束半径 r = ∞ といいます。なお,その境界の x = r ,-r ときはベキ級数によって収束したりしなかったりします。また,sup については ⇒ [#]
[証明] ⇒ パス
なお, 収束”半径” という用語が使われる理由を知るには複素関数まで勉強する必要があります⇒ [#]
[3] 具体的に収束半径を求める方法は次の定理,(特に(2))を用います。
コーシー・アダマールの定理, r0 +r1x +r2x2 + ・・・ +rnxn + ・・・ の収束半径 r と係数 rn との関係は, または, となる。 ただし,1/∞ = 0, 1/0 =∞ とする。 |
先の例では,
f(x) = 1 +x +x2 + ・・・ +xn + ・・・
において,
|rn+1| = 1 |rn|
なので,収束半径は,1 となります。また,指数関数のテイラー展開
ex = 1+ 1 ・x+ 1 ・x2+・・・・+ 1 ・xn+・・・・ 1! 2! n!
では,
|rn+1| = 1 = 0 |rn| n+1
よって,収束半径は,∞ となります。
[4] いくつか例を書いておきます。
関数 | べき級数 | 収束半径 | x=1で | x=-1で | |||||
|
|
1 | 発散 | 発散 | |||||
|
|
1 | 発散 | 発散 | |||||
− |
|
1 | 発散 | 収束 | |||||
− |
|
1 | 収束 | 収束 | |||||
ex |
|
∞ | 収束 | 収束 | |||||
log(1+x) |
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1 | 収束 | 発散 |