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8-2 同次関数 | |
f-denshi.com [目次] 最終更新日:07/06/24 | ||
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熱力学への応用で大変重要な全微分可能な2変数関数の性質をもう一つを紹介します。
[合成微分の公式]
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同じことなので,パタメータがひとつ t だけの f = f(x(t),y(t)),
df = ∂f dx + ∂f dy dt ∂x dt ∂y dt
= fxx' + fyy'
の場合で証明すると,
[2] f が微分可能ならば,
Δf =f(x+h,y+k)−f(x,y)
=fxh+fyk+ο( h2+k2 )
ここで,x,y が t で微分可能なことから,
h =x(t+Δt)−x(t)
=x'Δt+ο(Δt)
k =y(t+Δt)−y(t)
=y'Δt+ο(Δt)
これをΔf に代入して,
Δf=fx(x'Δt+ο(Δt))+fy(y'Δt+ο(Δt))+ο( (x'Δt+ο(Δt))2+(y'Δt+ο(Δt))2 )
=(fxx'+fyy')Δt+fxο(Δt)+fyο(Δt)+ο( (x'2+y'2)Δt2 )
=(fxx'+fyy')Δt+ο(Δt) ランダウ記号の計算については⇒ [#]
したがって,Δt→0 のとき,
Δf =fxx'+fyy' Δt
[3] 3変数の場合は,
[合成微分の公式] また,導出方法からわかるように関数の微分量について, が成り立ちます。 |
[1] オイラーの名のついた定理はいくつもありますが,同次関数におけるオイラーの定理は,生物学や化学,経済学など非常に幅広い分野で,規模の拡大に対する系の変動を表す数学モデルとして使われています。
オイラーの定理 n次の同次関数,f(x1,x2,・・・,xp)について,
ここで,n次の同次関数とは, f(tx1,tx2,・・・,txp) = tnf(x1,x2,・・・,xp) [オイラーの関係式] を満足する関数をいいます。 |
[2] 変数の数を増やすのは簡単なので2変数で説明します。関数 f(x,y) が次の性質を満たすときn次の同次関数です。
f(tx,ty)=tnf(x,y)
たとえば,
f(x,y)=(x+y)n
は,
f(tx,ty)=(tx+ty)n =tn(x+y)n =tnf(x,y) ・・・・・・・・・[*]
なので,n次の同次関数の例です。
このような同次関数に対して,オイラーの定理とは,
x ∂f +y ∂f =nf(x,y) ∂x ∂y
が成り立つことです。
[3] この証明は,
u=tx,v=ty として,[*] の左辺を合成関数 f(u(t),v(t))とみなせば,
∂f = ∂f ∂u + ∂f ∂v ∂t ∂u ∂t ∂v ∂t
= ∂f x + ∂f y ∂u ∂v
一方,[*]の右辺を t で微分すれば,
ntn-1f(x,y)
これらは等しいので,
∂f x + ∂f y=ntn-1f(x,y) ∂u ∂v
この式は,t→1 のとき,u→x,v→y なので,
∂f x + ∂f y=nf(x,y) ∂x ∂y
証明終わり。
[4] 特に1次の同次関数は,n
f(x,y)= ∂f x + ∂f y ∂x ∂y
ですが,
f→G, x→n1, y→n2, ∂f →μ1, ∂f →μ2 ∂x ∂y
と記号を置き換えれば,
G=n1μ1+n2μ2
つまり,熱力学で自由エネルギーを化学ポテンシャル[#]を使って表すときの数学的な背景がここ(同次関数となっている)にあります。