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109 確定特異点周りでの級数解 | |
f-denshi.com 更新日: |
ここでは,微分方程式: y''+P(x)y'+Q(x)y = 0 におけるP(x),Q(x)の少なくとも一方が,特異点をもつような微分方程式の解法について述べます。
定理 x=a で,P(x),Q(x)の少なくとも一方で確定特異点(=極)をもつとき, y''+P(x)y'+Q(x)y = 0の解は, x−a = X として,次の形に級数展開できる。
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[2] 具体的な例で説明した方がわかりやすいでしょう。 2階線形微分方程式
Ly ≡ 4xy''+2y'+y = 0 ・・・・・・・・・・・ [*]
は x=0 において1位の極 [#] (確定特異点) をもつことは下のように書けば明らかです。
y''+ 1 y'+ 1 y = 0 2x 4x
[3] 定理によると,この微分方程式の解は確定特異点 x=0 の周りで
y(x) =c0xr+c1xr+1+c2xr+2+c3xr+2+・・・・
= xr cn xn
と展開されるはずです。そこで,この式とその微分,
y'(x)= cn (n+r)xn+r-1
y''(x)= cn (n+r)(n+r−1)xn+r-2
を[*]に代入すると,
4x | ![]() |
cn (n+r)(n+r−1)xn+r-2 + 2 | ![]() |
cn (n+r)xn+r-1 + | ![]() |
cn xn+r |
= cn (n+r)(4n+4r−2)xn+r-1 + cn-1 xn+r-1
= r(4r−2)xr-1+ {cn(n+r)(4n+4r−2)+cn-1}xn+r-1 = 0
この方程式が成り立つためにはxk; (k=r-1,r,r+1,・・・・) の各係数がすべて 0 でなければならないので,
[決定方程式]
xr-1 の係数 ⇒ r(2r−1)=0 ・・・[**]
[漸化式]
xr,xr+1,・・ の係数 ⇒ 2cn(n+r)(2n+2r−1)+cn-1 = 0 ・・・[***]
が得られます。
[4] 一般に,
「 x の最小ベキを 0 とする条件から r の値を決定する決定方程式と呼ばれる方程式 」
が得られ,それより
「 高次の x のベキの係数がすべて 0 となる条件からはcnに関する漸化式 」
を得ることができます。
[5] さて,[**] 決定方程式から,
r = 0, または,r = 1/2
が得られますが,
(1) r = 0 のとき,漸化式は
cnn(2n−1)+cn-1 = 0 ⇒ cn = (-1)n c0 (2n)!
よって,
y = c0 (-1)n xn (2n)!
テーラー級数の公式を参考にするとさらに,
y = c0 cos x
(2) r = 1/2 のときは,
cnn(2n−1)+cn-1 = 0 ⇒ cn = (-1)n c0 (2n+1)!
y = c0
x (-1)n xn (2n+1)!
y = c0 sin x
以上より一般解は,任意定数を c1,c2 として,
y = c1cos x + c2sin x
[6] このように確定特異点の周りに解を展開できる微分方程式としては,
ルジャンドルの微分方程式
ベッセルの微分方程式
など重要なものが多くあります。
sin x = x − 1 x3+ 1 x5−・・・・+ (-1)n x2n+1 + ・・・・・ 3! 5! (2n+1)!
cos x = 1 − 1 x2+ 1 x4−・・・・+ (-1)n x2n + ・・・・・ 2! 4! 2n!
ここで,
x → x
とすれば本文中の展開級数の結果となります。