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A3 調和振動子 [1] |
f-denshi.com 更新日: |
[1] 古典力学からハミルトニアンは,ω=(k/m)1/2 として,
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[2] 演算子の定義
計算をスマートに進めるために,位置演算子 x と運動量演算子 p とを組み合わせた次のような演算子を定義します。
消滅演算子: a =
mω 2 hx + ip ・・・・・・・・・・・・ (2) mω
生成演算子: a† =
mω 2 hx − ip ・・・・・・・・・・・・ (3)
(消滅演算子の共役演算子です)mω
さらに, x0=(h/mω)1/2 とおけば,
消滅演算子: a ≡ 1 x + x02 i p
2 x0 h
生成演算子:
a† ≡ 1 x − x02 i p
2 x0 h
となります。すると,この演算子の交換関係は,[x,p]=ih なので,
[a,a†] = aa† − a†a
= (1/2h){-i [x,p]+i [p,x]} = 1
[3] さらに,個数演算子を次のように定義します。
N ≡ a†a
これは,(2),(3)を代入すれば,
N = a†a = mω x2 + p2 + i [x,p] = H − 1 2 hm2ω2 2 hhω2
Hについて解けば,
H ≡ hω(a†a+1/2) =hω(N+1/2)
となります。よって,H は N と可換であって同時対角化可能です。すなわち,その固有ケットを|n>とすると,
H|n> = En|n> ・・・・・・・・・・・ [*]
N|n> = n|n> ・・・・・・・・・・・ [**]
のように書くことができるはずです。 ここで,En,n は対応する固有値です。また,
H|n> =hω(N+1/2)|n>=hω(n+1/2)|n>
と Nを作用せてみると,この式を [*]と比較して,
En= hω(n+1/2)
であることもわかります。
[4] 一方,N と a との交換関係,
[ N ,a ] = - a ← [N ,a] = a†aa−aa†a = −[a,a†]a = −a なので
[ N,a† ] = a†
に注意しましょう。これを用いれば,
Na|n> =( [N,a] +aN) |n> = (n−1)a |n> ・・・・・・・・・・・・・・・・ (4)
Na†|n> =( [N†,a]+a†N)|n> = (n+1) a†|n> ・・・・・・・・・・・・・・・・ (5)
上式(4)をよく見ると,{ a | n> }は固有値 E が(n−1) である固有方程式[**] の固有関数であることを表していることに気が付きます。つまり,演算子 a は固有関数に作用して固有値が 1 だけ小さい固有関数を与えるのです。
a |n> → c|n-1> ( c: 比例定数 ) ←固有関数には定数倍の自由度があるので,
ここで,c は規格化条件から定まります。すなわち,各固有関数が規格化されているとして,
<n|a†a|n>=<n-1|c†c|n-1>=|c|2
一方,
<n|a†a|n>=<n|N|n>=n
したがって,c = |
|
と求まります。 |
同様に,{ a†| n> }は固有値が (n+1) である固有方程式[**]の固有関数であることがわかります。
a を消滅演算子,a† を生成演算子と呼ぶのはこのような理由からです。
a|n> =
n |n-1>
a†|n> =
n+1 |n+1>
[5] つぎに n が整数でなければならないことを示しましょう。今,ある固有関数|n> に a を次々と作用させて言った場合を考えます。まず,n が整数であるならば,このときに得られる固有値の列
n ,
n(n+1) ,・・・,
n(n+1) ・・・ 2・1 ,0
は最後に 0 となり,それ以上は a を作用させても意味がなくなります。一方,n が整数でなければ,マイナスの整数でない n の項を持つ固有値の列が無限に続くことになります。しかし,量子力学の基本要請から確率の意味を有するケットのノルムは正でなければならない,すなわち,
(<n|a† )(a|n>) ≧ 0
を考慮すると, <n|a† a|n> = <n|N|n> = n なので結局,
n ≧ 0
でなければならないことがわかります。すなわち,n は整数でなければならず,しかも,0
が最小値となります。このとき,エネルギーが最低の基底状態|0>での固有エネルギーは
E0 =(1/2)h ω です。
[6] まとめ
固有値と固有ケット
H|n> = En|n> : En=(n+1/2) |
[1] これまででてきた演算子を固有ケット|n>を基底とする行列で展開すれば,
<n'|a|n>=n1/2δn'n-1
<n'|a†|n>=(n+1)1/2δn'n+1
なので,
また,位置演算子 x,運動量演算子 p の行列表現は, x0=(h/mω)1/2 として,
x =( p =i (m |
[2] [ x,p のN 表示 ]
<n'|x|n>=(h/2mω)1/2{ n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1 }
= 2-1/2x0{ n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1 }
<n'|p|n>=i (mhω/2)1/2{ -n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1 }
= ih2-1/2x0-1{ -n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1 }
[x,p の N−表示] <n'|x|n>= 2-1/2x0{ n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1 } <n'|p|n>=i ただし, x0=( |
[3] [ x−表示 ]
a|0>=0 より
0 = <x'|a|0> = 2-1/2x0-1 <x'| x+ ip |0> mω
↓ ここで, <x'|x|0> = x'<x'|0> および,
↓ <x'|p|0> = −i h∂ <x'|0> を用いると, ∂x'
=( x'+x02) d <x'|0> =0 dx'
この方程式の解は,
<x'|0>=(π-1/4・x0-1/2)exp − 1 x' 2 x0
さらに生成演算子 a† を利用して,|0>から|1>,|2>,・・・ の具体的な関数を求めることができます。
<x'|1>= <x'|a†|0> = (2-1/2x0-1) x'−x02 d ![]()
<x'|0> dx'
<x'|2>=2-1/2<x'|a†a†|0> = 2-1/2(2-1/2x0-1)2 x'−x02 d 2 <x'|0> dx'
<x'|3>=(3・2)-1/2<x'|(a†)3|0>=(3・2)-1/2(2-1/2x0-1)3 x'−x02 d 3 <x'|0> dx'
これを続けると,次の結果を得ることができます。
[ 調和振動子の固有関数 <x'|n> ]ただし, x0=( |
x2 = (x02/2)(a2+a†2+a†a+aa†)
p2 = (-h2/2x02)(a2+a†2−a†a−aa†)
第4項のみ基底のみ期待位置の計算に寄与する(他の項はゼロ)。すなわち,
<0|x2|0>=x02/2<0|aa†|0>
=x02/2<0|a|1>
=x02/2<0|0>
=x02/2
同様に
<0|p2|0>=h2/2x02
運動エネルギー
<p2/2m>=h2/4mx02=hω/4
ポテンシャルエネルギー
<mω2x2/2>=mω2x02/4=hω/4
定義
<(Δx)2>≡<x2>−<x>2 (=x02/2)
<(Δp)2>≡<p2>−<p>2 (=h2/2x02)
<(Δx)2><(Δp)2>=h2/4
( 励起状態では,<(Δx)2><(Δp)2>=(n+1/2)2h2
3.時間発展
ハイゼンベルグ表示
dp | =−mω2x2 ( =− | ∂V(x) | ) | |
dt | ∂xj |
dx | = | p | |
dt | m |
演算子に変換すると,
⇔
da | = −i ωa | |
dt |
da† | = −i ωa† | |
dt |
解は,
a(t) =a(0)e−i ωt)
a†(t)=a†(0)e−i ωt
⇔ 演算子 x,p に戻すと,
x(t)+i p(t)/mω=x(0)e−i ωt)+{i p(0)/mω}e−i ωt
x(t)−i p(t)/mω=x(0)ei ωt) −{i p(0)/mω}ei ωt
⇔
演算子の時間発展 x(t)= x(0)cosωt+(p(0)/mω)sinωt p(t)=−mωx(0)sinωt+ p(0)sinωt |
角運動量
+,− で区別する独立した調和振動子の消滅,生成演算子を
a+, a+† ( 調和振動子 + に作用する )
a-, a-† ( 調和振動子 − に作用する )
とし,これを用いて次の演算子を定義する。
J+ ≡ha+† a−
J− ≡ha−† a+
Jz ≡ ha+† a− − a−† a+ 2
N ≡a+,a+† + a-,a-†
J2 ≡Jz2 + 1 J+J− + J−J+ 2
とするとき,
[ Jz ,J+ ] =hJ+ ; [ Jz,J− ] = −hJ−
[ J2 ,Jz ] = 0
J2 =
h2N N +1 2 2