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1 ベクトルの代数と公式(その2) |
f-denshi.com [目次へ] 最終更新日:05/05/04 | |
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[1] 外積の定義
3次元ユークリド空間で外積とは,2つのベクトルx,y から一つのベクトルz (=x ×y )への写像で,
外積 z =x ×y , 大きさ: | z | =x ×y = |x ||y| sinθ, 方向: x ,y ,z の両方に垂直で,x ,y ,z の順で右手系になる。 ここで,ベクトル x ,y の大きさ(=ノルム)を |x |,|y|,それらのなす角度をθとする。 |
と定義します。正規直交座標系では,x = (x1,x2,x3),y= (y1,y2,y3)とすると,
z = (z1,z2,z3)
= x ×y
= (x2y3−x3y2,x3y1−x1y3,x1y2−x2y1)
特に,標準基底ベクトル,e1,e2,e3 については,簡単な計算から
e1×e2 = e3
e2×e3 = e1
e3×e1 = e2・・・・・・・・・・・・ [*]
の関係があることもわかります。また,
|x ×y |
はベクトル x ,y で作られる右のような平行四辺形の面積に等しくなります
[2] 外積の基本的な公式
公式1 外積
(1) x ×x =0 |
( 注意 ) x ×(y ×z ) ≠ (x ×y )×z
(1)−(4)[証明略]
(5)は,x ×y (=z )はx ,y の張る平面に垂直なことを意味しています。3次元ユークリッド空間を考えるときは,その幾何学的方向は2とおり(x-y平面の表方向と裏方向)の定義が可能ですが,慣用では右手系と呼ばれる方を採用(定義)します(右図参照)。
[3] 先程示したように,標準基底ベクトルにはe1×e2 =e3 という関係があります(つまり,右手系)。ここで,標準基底(縦ベクトル)の成分を横に並べた行列を考える[#]と,それは単位行列でその行列式は正です。
|e1e2e3|= 1 0 0 = 1 > 0 0 1 0 0 0 1
すると,左手系の標準ベクトルは,
e’1=(1,0,0),e’2=(0,1,0),e’3=−e3=(0,0,−1)
となり,|e1’e2’e3’|= −1 < 0 であることがわかります。
[4] 三重積
よく使われる公式です。
公式2 三重積 など (1) x ×(y ×z )=(x ・z )y −(x ・y )z [ベクトル3重積] (2) x ・(y×z )=y ・(z ×x )=z ・(x ×y ) ≡ [x y z ] [スカラー3重積] (εijk xi yjzk) (2)’ [x y z ]=[y z x ]=[z x y ]=−[x z y ]=−[z y x ]=−[y x z ] (3) x ×(y ×z )+y ×(z ×x )+z ×(x ×y ) = 0 [ヤコビの恒等式] (4) (x ×y )・(z ×v ) =(x ・z )(y ・v )−(y ・z )(x ・v ) (4)' (x ×y )・(z ×v ) =x ・(y ×(z ×v )) (5) (x ×y )×(z ×v ) = [x y v ]z −[x y z ]v (6) (x ×y )・(y ×z ) ×(z ×x ) = [x y z]2 |
(証明略)
注意:
しばしば,内積と外積が混じりあう式は,「計算が可能な順に計算すること」との暗黙の了解がなされます。例えば,
x ・y ×z は,
x ・(y ×z ) は計算できるのでOKですが,
(x ・y )×z はスカラーとベクトルの外積となり意味をなさないので,ダメということ。一般にベクトル間には,
(X ・Y )Z =Z (X ・Y ) [ スカラーとベクトルの積 ]
X ・(Y ×Z ) = (Y ×Z )・X [ ベクトルとベクトル積との内積 ]のような交換関係があります。しかし,べクトルと微分作用素(次章を参照)が混ざると上の交換則が成り立たない場合があります。
証明は,パスさせてもらいますが,少しコメントを付け加えておきます。外積:x ×y =z の成分(z1,z2,z3)は行列式,
1 1 1 x1 x2 x3 y1 y2 y3
の一行目の余因子[#],に対応していることを覚えておくと便利です。すなわち,
(z1,z2,z3)=(Δ11,Δ12,Δ13)
Δ11= x2 x3 ,=− x1 x3 ,Δ13= x1 x2 y2 y3 y1 y3 y1 y2
と書けます。これを利用すると,x ×y (=z),x,y から作られる次のスカラー三重積は,
z ・(x ×y )= z1 z2 z3 = z1Δ11+z2Δ12+z3・Δ13 x1 x2 x3 y1 y2 y3
= z12+z22+z32 =|z|2
=|x ×y|2 > 0 ( x と y は1次独立として)
のように計算でき,正の値をとります。3つのベクトル,x ,y ,x×y を順に並べてつくった行列式は常に正と言いかえてもいいでしょう。その理由はスカラー三重積の幾何学的な意味が,右図に示すようにベクトルx ,y のつくる平行四辺形を底面,高さを |x ×y | とする四角柱の体積だからです。
より一般的には,スカラー3重積 z ・(x ×y )の絶対値がベクトルx,y,z のつくる平行6面体の体積と等しくなっています。 つぎのように書くとわかりやすい?
[x y z ]=|z |{|x ||y |sinθ}cosψ
絶対値といわなければない理由は右図のように,0<ψ<π/2 (右手系)のときのスカラー三重積は正の値をとりますが,角度がπ/2<ψ<π(左手系)にあるときはマイナスの符号を必要とするからです。
[1] 相反基底
1次独立な3つのベクトル,{a1,a2,a3 }を基底とするとき,
|
← 物理では, am・bn = 2πδmn と定義することも多い。 |
をみたすbn からなる基底,{b1,b2,b3 }を相反基底といいます[#]。具体的には,
b1 = a2×a3 ,b2 = a3×a1 ,b3 = a1×a2 [a1a2a3] [a1a2a3] [a1a2a3]
とおけば,相反基底となります。もちろん,分母はベクトル3重積です[#]。また,対称性から,
a1 = b2×b3 ,a2 = b3×b1 ,a3 = b1×b2 [b1b2b3] [b1b2b3] [b1b2b3]
と書きなおせます。
[2] 基底{a1,a2,a3 }とその相反基底{b1,b2,b3 }に関して,
公式3 (1)任意のベクトル d について, d = ( d ・b1 ) a1 + ( d ・b2 ) a2 + ( d ・b3 ) a3 ; [a1a2a3] ≠ 0
|
証明
(1) 公式2の(5)より,
[x y z ]v = [x y v ]z −[z v x ]y + [z v y ]x
ここで,x, y,z ,v → a1,a2,a3,d と記号を変え,
[a1a2a3]d = [a1a2d ]a3−[a3da1]a2+ [a3d a2]a1
公式2の(2)’を用いて並び換えれば,
↓ スカラー3重積の定義=公式2の(2)
d = 1 [d a2a3]a1 +[d a3a1]a2 +[d a1a2]a3 [a1a2a3] = ( d ・b1 ) a1 + ( d ・b2 ) a2 + ( d ・b3 ) a3
= 1 d ・(a2×a3)a1 +d ・(a3×a1)a2 +d ・(a1×a2)a3 [a1a2a3]
(2) 公式2の(6)より,
[a1a2a3] = a1・a2×a3 = b2×b3 ・ b3×b1 × b1×b2 [b1b2b3] [b1b2b3] [b1b2b3]
= [b1b2b3]2 = 1 [b1b2b3]3 [b1b2b3]
クロネッカーのδとエディントンのεの性質をまとめておきましょう。 → [#]
δst= 1 s=t 0 s≠t
εijk= ε123=ε231=ε312 = 1 ε321=ε213=ε132 = -1 εその他 = 0
σ(εijk)=−εijk [σ:互換操作,]
εsjkεsmn δjm δjn =δjmδkn−δjnδkm δkm δkn
εstjεstk=2δjk
εstuεstu=6
[1] 異なる2つの座標系の基底ベクトルを,Σ ={e1,e2,e3},Σ’={e'1,e'2,e'3} とします。ベクトルx はそれぞれの座標系で,
x = xe1+ye2 +zen (座標系Σ)
x =Xe'1+Ye'2+Ze'n (座標系Σ’)
とします。Σ’の各基底ベクトルe'jもベクトルの一つですから座標系Σの基底を用いて一次結合で表せます。それを
e'1= p11e1+p21e2+p31e3 ≡(p11,p21,p31)
e'2= p12e1+p22e2+p32e3 ≡(p12,p22,p32)
e'3= p13e1+p23e2+p33e3 ≡(p13,p23,p33)
とします。この pjk はΣ と Σ’ が与えられると同時に定まるものです。 このとき,各座標系におけるベクトル成分の関係は行列を用いて表すと,
x p11 p12 p13 X y = p21 p22 p23 Y z p31 p32 p33 Z
となります。詳細は →[#] 。 ここで,
P ≡ p11 p12 p13 p21p22 p23 p31 p32 p33
を 座標変換の行列 (または,基底変換の行列) といいます。
[2] 特別な場合として,3次元空間の z 軸周りで角度θの回転を,
回転前 Σ(x,y,z) → 回転後 Σ’(X,Y,Z)
とすると,z = Z なのでで,x-y平面内の原点周りの回転と考えて,
e'1= p11e1+p21e2 = cosθe1+sinθe2
e'2= p12e1+p22e2 =-sinθe1+cosθe2
および,
x = p11 p12 = cosθ -sinθ X y p21 p22 sinθ cosθ Y
ここで,
P(θ)= cosθ -sinθ sinθ cosθ
は回転行列です。
[3] 時刻とともに連続的に回転する座標系については,コリオリの力をぜひ見ておいてください→[#]