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定常状態の摂動論 1 | |
f-denshi.com 更新日:05/05/12 |
定常状態の摂動論の一般論についてまとめてます。特別気のきいた説明はありませんが、
色分けして見やすくしています。
[1] シュレーディンガー方程式の厳密解が求まることはほとんどなく、実用上は近似を用いて満足することになります。
まず、問題となるシュレーディンガー方程式(=固有方程式)、
H|n>=εn|n> ・・・・・・・ [*]
において、ハミルトニアン H は、次のように主要部分 H0 と摂動項と呼ばれる小さな項λH’との和で、
H = H0 + λH’ 、 λ << 1
と書くことが可能とします。このとき、主要部分の固有方程式、
H0 |n(0) >= εn(0)|n(0)> ・・・・・・・ [**]
は厳密に解くことができて、
固有値: ε1(0)、ε2(0)、ε3(0) ・・・・
と、完全直交関数系をなす
固有関数: {|1(0)>、|2(0)>、・・・、|n>(0)、・・・}
がわかっているとします。 (つまり,「摂動法」が適用できるためには主要項H0 の厳密解がわかっている必要がある! 一方,もう一つの重要な近似法である「変分法」ではその必要はありません。)
[2] 今、λ→0 のとき、つまり、H → H0 のとき、
|n> →|n(0)>、 εn→εn(0)
なので、[*] の解、|n> と εn を次のようなλのベキ級数展開の形で求めることにします。
|n> = |n(0)> + λ|n(1)> + λ2|n(2)> + ・・・・
εn = εn(0) + λεn(1) + λ2εn(2) + λ3εn(3) +・・・・・・・・[0]
すなわち、|n(1)> 、|n(2)> 、・・・と、εn(1) 、εn(2) ・・・ をすでに既知である、
ε1(0)、ε2(0)、ε3(0) ・・・・ と |1(0)>、|2(0)>、・・・、|n(0)>、・・・
を用いて表すことができれば、問題解決 ということです。
[3] そこで、[0] をもとのシュレーディンガー方程式 [*] に代入すると、
(H0+λH’)( |n(0)> + λ|n(1)> + λ2|n(2)> + ・・・・)
=(εn(0) +λεn(1)+ λ2εn(2) + ・・・・)( |n>n(0) + λ|n(1)> + λ2|n(2)> + ・・・・)
λの次数で整理すると、
H0 |n(0)>
+
{H’|n(0)>+H0|n(1)> }λ
+
{H’|n(1)> +H0|n(2)> }λ2 + ・・・・
=εn(0)|n(0)>
+
{εn(1) |n(0)>+εn(0)|n(1)> }λ
+ {εn(2)|n(0)>+εn(1)|n(1)>+εn(0) |n(2)>}λ2 + ・・・・
この恒等式が成り立つためにはλの各次数について両辺が等しくなければならない。すなわち、
[ λの1次の項の比較から ] H’|n(0)>+H0|n(1)> =εn(1) |n(0)>+εn(0)|n(1)> ・・・・・・ (1) [ λの2次の項の比較から ] H’|n(1)> +H0|n(2)> =εn(2)|n(0)> +εn(1)|n>n(1)+εn(0) |n>n(2)} ・・・・ (2) |
[4] |n>(1) を、|n(0)> での展開した、 (↓これから ck を求めようとしてます.)
|n>(1) =c1|1(0)>+c2|2(0)>+・・・+cn|n(0)> + ・・・
= ck|k(0)>
を(1)に代入すると、
H’|n(0)>+(H0−εn(0))|n(1)> =εn(1) |n(0)>
↓ H0|k(0)>=εk(0)|k(0)> なので
H’|n(0)>+(H0−εn(0)) ck|k(0)> =εn(1) |n(0)>
H’|n(0)>+ (εk(0)−εn(0))ck|k(0)> =εn(1) |n(0)> ・・・・(3)
この式について左から <n(0)|をかければ、、
<n(0)|H’|n(0)>+ (εk(0)−εn(0))ck<n(0)|k(0)> =εn(1) <n(0)|n(0)>
↓ <n(0)|k(0)>=δnk に注意して、
<n(0)|H’|n(0)>=εn(1) ← εn(1) が求まりました。
[5] また、(3)に左から <j(0)|、 ( j ≠ n ) をかければ、
<j(0)|H’|n(0)>+(εj(0)−εn(0))cj = 0 ← cj ( j ≠ n ) が求まりました。
したがって、 (j =n のとき、つまり、 cn については、0 [#] )
1次の摂動エネルギーと εn(1) = <n(0)|H’|n(0)>
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[6] 2次の摂動項についても1の場合と同様な計算を、 (↓これから dk を求めようとしてます.)
|n(2) >= d1|1(0)>+d2|2(0)>+・・・+dn|n(0)> + ・・・
= dk|k(0)>
として dkを求めればよいことがわかっています。ひたすら計算するだけなのですが、詳細はパスして結果だけ書いておくと、
2次の摂動エネルギーと
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以上で一般論は終わりで、次ページから簡単な系について具体的に計算してみましょう。
|n> = |n(0)> + λ|n(1)> + λ2|n(2)> + ・・・・
|n>(1) =c1|1(0)>+c2|2(0)>+・・・+cn|n(0)> + ・・・
|n(2) >= d1|1(0)>+d2|2(0)>+・・・+dn|n(0)> + ・・・
<n|n>=<n(0)|n(0)>+λ(<n(0)|n(1)>+<n(1)|n(0)>)+λ2(<n(1)|n(1)>+<n(0)|n(2)>+<n(2)|n(0)>)+・・・・
=1+(cn+cn* )λ+(c12+c22+・・・+cn2+ ・+dn+dn*)λ2 + ・・・
ここで,<n|n>が1と規格化されるためには各λの冪の係数が0でなくてはならない。特に1次の項から,cnは0であるか純虚数でなければならないことが分かる。