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7 三角行列への変換 | |
f-denshi.com [目次] 最終更新日: 07/11/1 | ||
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[1] 前ページで定義されたユニタリ演算子に関連した数多くの定理が存在しますが,ここでは次の一つだけ述べておきましょう。 一般的に,複素数を成分とする場合,代数学の基本定理[#]より,固有方程式は必ず重複を含めてn個の解をもつので,それらをλ1,λ2,・・・,λn とすれば,
ΦT(λ)=(λ−λ1)(λ−λ2)・・・(λ−λn)
と因数分解できます。そこで次の定理です。
定理 三角化 n次元ユニタリ空間V 上の線形演算子Tの固有値を λ1,λ2,・・・,λn とすれば,Tは適当なユニタリ行列によって次のような上三角行列に変換できる。 ただし,* には任意の行列要素が並ぶ。 |
この定理は一般の正則行列についても成り立ちます。
[2]
証明
数学的帰納法によります。n次元ユニタリ空間V について,
n=1のとき,
明らかに定理は成り立ちます。
n=n−1のとき,
定理が成り立っていると仮定します。
n=n のときを考えます。
n次元ユニタリ空間の固有値λ1,λ2,・・・λn の一つλ1 の固有ベクトルをu1 (←縦べクトル)とすれば,(つまり,Tu1=λ1u1) これに,n-1個の互いに直交する大きさ1のベクトル,v2,v3,・・・,vn を補ってV の正規直交基底
Σ={u1,v2,v3,・・・,vn }
とすることができます[#]。これを並べて作られる[#] 次のユニタリ行列P:
P ≡(u1,v2,・・・,vn ),および,P-1=P*= u1* v2* : vn*
による基底変換によって,線形演算子Tは,
P-1TP = P-1(Tu1,Tv2, ・・・,Tvn)=(λ1P-1u1,P-1Tv2, ・・・,P-1Tvn) ←縦ベクトルを並べた行列ですよ
さらに,第1列目の成分 λ1P-1u1 をもう少し計算すると,
P-1TP | = | ![]() |
λ1 | ![]() |
u1*u1 | ![]() |
,P-1Tv2,・・・,P-1Tvn | ![]() |
= | ![]() |
λ1 | * | ・・ | * | ![]() |
・・・[*1] | ||
v2*u1 | 0 | S | ||||||||||||||||
: | : | |||||||||||||||||
vn*u1 | 0 |
のような1列目にの2行目以降の成分が0であるブロック行列となります。ただし,Sは適当な(n-1)次正方行列の成分が並びます。すると,ブロック化された行列式の性質[#]を用いて,Tの固有方程式を,
|λE−T|=|λE−P-1TP |=(λ−λ1)|λEn-1−S| ; En-1はn-1次の単位行列
と計算できる[#]ことがわかります。したがって,
Sの固有値は,Tの残りの固有値,λ2,・・・,λn に一致する。
ということができます。
[3] ところが仮定より,(n-1)次行列Sはあるユニタリ行列Q によって三角行列に変換でき,
Q-1SQ=Q*SQ=
λ2 * λ3 O : λn
と書けるはずです。したがって,ユニタリ行列,
U ≡ P 1 0 ・・ 0 , 及び, U-1= 1 0 ・・ 0 P-1 0 Q 0 Q-1 : : 0 0
を用いれば,
U-1TU= 1 0 ・・ 0 P-1TP 1 0 ・・ 0 0 Q-1 0 Q : : 0 0
↓ [*1] より
= 1 0 ・・ 0 λ1 * ・・ * 1 0 ・・ 0 0 Q-1 0 S 0 Q : : : 0 0 0
= λ1 * ・・ * 0 Q-1SQ : 0
=
λ1 * λ2 O : λn
証明終
[4] なお,三角行列 L について,そのs個のベキは,
Ls =
λ1s * λ2s O : λns
という三角行列で,対角線上に固有値のs乗, λ1s,λ2s,・・・,λ2s が並びます。これはたいへん重要な性質!
また,
λ1 * λ2 O : λn =
λ1 O λ2 O : λn =
0 * 0 O : 0
と書いてみれば,(上)三角行列は,対角行列(第1項)とベキ零行列(第2項)との和で表すことができます。
ベキ零行列については,Appendix3 を参考にして下さい。