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Appendix 3 ベキ零行列 | |
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ベキ零行列G (Gs=O ,∃s)の固有方程式が,ΦG(λ)=|λE−G|=λd であること,つまり,固有値がすべて0 であることの証明です。
[1] まず,次の命題から
命題: 行列Tの固有多項式を, ΦT(λ) = (λ−λ1)(λ−λ2)・・・(λ−λn) とする。このとき,任意の多項式 g(t) において,t → T と機械的に置き換えた行列 g(T) の固有多項式は, Φg(T)(λ) = (λ−g(λ1))(λ−g(λ2))・・・(λ−g(λn))である。つまり,行列 g(T) の固有値は, g(λ1),g(λ2),・・・,g(λn)である。 特に, g(t) = ts ならば, ΦTs(λ)=(λ−λ1s)(λ−λ2s)・・・(λ−λns) ; 固有値:λ1s,λ2s,・・・,λns |
[2] [証明]
線形演算子T は,適当なユニタリ演算子Uを用いて
U-1TU=U*TU=
λ1 * λ2 O : λn
と三角行列に変換できます[#]。すると(1)を両辺 r 乗すれば,( r : 任意の非負整数 )
(左辺)r = (U-1TU)r = U-1TUU-1TU・・・・・UU-1TU = U-1TrU ← g(t) = tr の場合です。
一方,右辺は,
(右辺)r =
λ1r *' λ2r O : λnr
のように対角線上に各固有値の r 乗が並んだ三角行列となります。
これより一般的に,任意の多項式 g(t)=a0+a1t+a2t2+・・・+antn において,t→T,1→E とした g(T) [#] について,
U-1g(T)U=U-1(a0E+a1T+a2T2+・・・+anTn )U
=a0E+a1U-1TU +a2U-1T2U + ・・・ +anU-1Tn U
= | ![]() |
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+ | ![]() |
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+ | ![]() |
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+・・・+ | ![]() |
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= | ![]() |
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が成り立つことがわかります。ただし,*のところには任意の数値が入ります。
[3] そこで,
定理: |
上の命題において,T=G をベキ零行列 ( Gs =O,G の固有値:λ1,λ2,・・・,λn ) とすると,適当なユニタリ行列によって,
O = U-1OU = U-1GsU =
λ1s * λ2s O : λns
すなわち,
λ1s=0,λ2s=0,・・・,λns=0 ⇒ λ1=0,λ2=0,・・・,λn=0
であることがわかります。
すなわち,ベキ零行列G の固有値はすべて 0 であり,その固有方程式は,
ΦG(λ) = λn = 0
でなければならない。 (cf. 逆もハミルトン・ケーリーの定理から成立)
[4] 2014/07/06 以下の項目を追加
命題 ベキ零行列G について,Gs=O かつ,Gs-1≠O とすると,Gs-1u≠0 となるu≠0 が存在するが,このu を用いてつくったs個のベクトル, u,Gu,G2u,・・・,Gs-1u は1次独立である。 (Gはn次正方行列で,s≦n とする。) |
証明
背理法による。与えられたs個のベクトルが1次従属であると仮定すると,すべては零でない係数cj (j=0,・・・,s-1)を用いて,
c0u+c1Gu+c2G2u+・・・+cs-1Gs-1u =0 ・・・・[*]
とできる。ところが,係数を左の方から見ていき,最初に,ci≠0 であるならば,上式に左から Gs-1-i をかけて,
ciGs-1u =0
となるが,この左辺は0でないので,ある i について,ci≠0 であるとすると矛盾を生じる。すなわち,・[*]が成り立つときは,すべての係数は0でなければならず,u,Gu,G2u,・・・,Gs-1u は1次独立であることが分かる。
この命題はジョルダン標準形を求める時に使います。⇒ [#]