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431 ルジャンドル関数 |
f-denshi.com 更新日: |
ここでは,ガウスの超幾何級数[#] を既知として説明していますので,お急ぎでない方はそちらを勉強してからこのページを読むことをお勧めします。
[1] ルジャンドルの微分方程式とは,ν ≧ 0 整数とし,
ルジャンドルの微分方程式 の解,y =Pν(x) はルジャンドル多項式と呼ばれ,次式で与えられる。 具体的な式は, P0(x) = 1 P1(x) = x
ν/2 ≡ ν/2 (ν:偶数)一般解は,第2種特殊ルジャンドル関数 Qν(x) との線形結合, APν(x)+BQν(x) で与えられる。Qν(x) は本文参照のこと。 |
このルジャンドルの微分方程式は,
(1) x=1−2u とおくと,
u(1−u)y''+(1−2u)y'+ν(ν+1)y = 0
となって,ガウスの微分方程式 [#] :
u(1-u)y''+{C−(A+B+1)u}y'−ABy = 0 (変数 u に関する方程式 )
において,
C ⇒ 1,
A ⇒ ν+1,
B ⇒ -ν,
u ⇒ (1−x)/2
とした場合であることがわかります。 したがって,ルジャンドルの微分方程式の確定特異点 u=0 (x=1) の周りの解はガウスの超幾何級数[#] を用いて,
F(−ν,ν+1,1; (1−x)/2)
と表せることがわかります。
[2] ただし,B =−ν が負であるため,無限級数とならずに,
−ν+n−1 = 0, (つまり, n = ν+1)
なる n ( =ν+1) 以上の展開係数 cn は [#], すべて 0 となります。 すなわち,
F(ν+1,-ν,1; (1−x)/2 ) ⇒
|
と表せて,ルジャンドル多項式 と呼ばれます。
再掲: ガウスの超幾何級数[#]
F(A,B,C;x)=1+ AB x+ A(A+1)B(B+1) x2+・・・ 1・C 1・2・C(C+1)
・・・+ A(A+1)・・・(A+n−1)B(B+1)・・・(B+n−1) xn+・・・ n!C(C+1)・・・(C+n−1)
[3] 具体的にいくつか書いておくと,
ν=1 (B=-1) のとき, P1(x)= 1+ | (1+1)(-1) | ・u = 1−2(1−x)/2 = x |
1!・1 |
ν=2 (B=-2)のとき, P2(x)= 1+ | 3・(-2) | (1−x)/2 + | 3・4・(-2)(-1) | {(1−x)/2}2= | 3x2−1 |
1!・1 | 2!・1・2 | 2 |
などと計算することができ,
P0(x) = 1
P4(x)= 35x4−30x2+3 8 P1(x) = x
P5(x)= 63x5−70x3+15x 8
P2(x)= 3x2−1 2
P6(x)= 231x6−315x4+105x2−5 16
P3(x)= 5x3−3x 2
P7(x)= 429x7−693x5+315x3−35x 16
などとなります。
[4] 同様に,
(2) x=1+2u とおくと,確定特異点 x=−1 の周りの解として,
F(−ν,ν+1,1;(1+x)/2)
も得られます。
[5] 一方,
(3) x=1/t とおくと,確定特異点 x=∞ の周りの解が得られますが,この解の一つは,第2種のルジャンドル関数と呼ばれます。
ルジャンドルの微分方程式を APν+BQν と表すときの第2種特殊ルジャンドル関数の具体的な形は,
Q0= 1 log 1+x 2 1−x
Q1= x log 1+x −1 2 1−x
Q2= 3x2−1 log 1+x − 3x 4 1−x 2
Q3= 5x3−3x log 1+x − 5x2 + 2 4 1−x 2 3
詳細は ⇒ [#]
[6] 以上,やや天下り的な説明でしたが,むしろ,この多項式がもっている物理的な意味の方が重要なので,そちらも説明しておきましょう。そして,この多項式(=ルジャンドル関数)を解にもつ微分方程式を作ってやると,それがルジャンドルの微分方程式であることを確かめることにします。
重力やクーロン力など多くの力のポテンシャルは2つのベクトルr ,Δr の差の大きさの逆数,|r −Δr|-1 に比例します。そのベクトルのなす角を θ,r=|r|>>|Δr|=Δr として,(Δr/r)の級数に展開した展開係数に関係付けられる関数が Pν (cosθ) なのです[#1],[#2]。 つまり,
↓ t = Δr/r ,x=cosθ として,
1 = 1 |r−Δr|
r2−2r・Δrcosθ+(Δr)2
= 1
r 1 − 2xt + t2
= 1 Pν (x)・tν r
と書くことができます。 ここで,ルジャンドル関数の母関数と呼ばれる
F(t,x) ≡ 1 = Pν (x)・tν ・・・・・・ [**]
1 − 2xt + t2
を定義すると,その t に関するテーラー展開と比較から,
Pν(x) = 1 ・ dν
1 − 2xt + t2 ν! dxν t = 0
= 1 ・ dν (x2−1)ν [ロドリクの公式] 2ν ・ν! dxν
でなければなりません。
ただし,最後の ''='' の証明はちょと手間であって,たとえば,
「グライナー量子力学」,シュプリングフェアラーク東京(1991年) の 101
ページ
を参考にしてください。
[6] さて,この Pν(x) がルジャンドルの微分方程式の解であることは,Pν(x) について成り立つ漸化式 [#],
(x2−1)Pν'(x) = νx Pν(x) − νPν−1(x) ・・・・・・(1)
xPν'(x) − Pν-1'(x) = νPν(x) ・・・・・・(2)
Pν'(x) ≡ d Pν(x) dx
を使います。 ただし,Pν'(x) = dPν(x)/dx 。 (1)を微分して,(2)を用いれば,
2xPν'(x) + (x2−1)Pν''(x) = νPν(x) + νx Pν'(x)− νPν−1'(x)
= νPν(x) + ν{ x Pν'(x)− Pν−1'(x) }
= νPν(x) + ν2 Pν(x)
これを並びかえれば,
(1−x2)Pν''(x) − 2x Pν'(x) + ν(ν + 1)Pν(x) = 0
と,ルジャンドルの微分方程式 になることがわかります。
[7] 有用な公式を示します。
公式 (1) Pν(-x)=(-1)νPν(x) (2) (ν+1)Pν+1(x) = (2ν+1)xPν(x)−νPν-1(x) (3) Pν+1'(x) = (2ν+1)Pν(x)+Pν-1'(x) (4) Pν+1'(x) =(ν+1)Pν(x)+ xPν'(x) |
他には,自明であるが,
Pν(1)=1
Pν(-1)=(-1)ν
Pν+1(0)=0
Pν'(1) = ν(ν+1) 2
Pν'(-1) = (-1)ν-1 ν(ν+1) 2
P2ν'(0) = 0
P2ν+1'(0) = (-1)ν 1・3・・・(2ν+1) 2・4・・・2ν
が成り立つ。
ルジャンドル多項式の直交性
Pν(x)・Pμ(x)dx = 0 ・・・・・・ (ν≠μ )
2 2ν+ 1 ・・・・・・ (ν=μ)
Pν(x) dx = 0 (ν≠2m )
1・3・・・(2m-1) 2・4・・・(2m+2) (-1)m (ν=2m+1)
xνPν(x) dx = 2ν(ν!)2 (2ν+1)!
xPν(x)・Pν-1(x) dx = 2ν 4ν2−1
xPν(x)・Pν'(x) dx = 2ν 2ν+1
x2Pν(x)・Pν-1(x) dx = 0
x2Pν(x)・Pν'(x) dx = 0
Pν(x)において,x ⇒ cosθとしたときは,倍角の公式等が使えて次のように書かれます。
P0(cosθ) = 1
P1(cosθ) = cosθ
P2(cosθ) = (3cos2θ−1)/2
= (1+3cos 2θ)/4
P3(cosθ) = (5cos3θ−3cosθ)/2
= (3cosθ+5cos 3θ)/8
P4(cosθ) = (35cos3θ−30cosθ+3)/8
= (9+20cos 2θ+35cos 4θ)/64
P5(cosθ) = (30cosθ+35cos 3θ+63cos 5θ)/128
P6(cosθ) = (50+105cos 2θ+126cos 4θ+231cos 6θ)/512
P7(cosθ) = (175cosθ+189cos 3θ+231cos 5θ+429cos 7θ)/1024
補足2 Pν(x) に関して成り立つ漸化式
まず,ルジャンドル関数の母関数 [**] を t で微分して,
⇔
∂F(x,t) = x−t ・ Pν (x)・tν = νPν (x)・tν−1 ∂t 1 − 2xt + t2
(x−t) Pν (x)・tν = (1 − 2xt + t2) νPν (x)・tν−1
⇔
・・・+ xPν(x)・tν−Pν-1(x)・tν+・・・
= ・・・+(ν+1)Pν+1 (x)・tν − 2xνPν(x)・tν + (ν−1)Pν−1(x)・tν+・・・
これより,tν の項を比較して,漸化式,
(ν+1)Pν+1 (x) − (2ν+1)xPν(x) + νPν−1(x) = 0 (1)
公式 (2) が得られます。
また,ルジャンドル関数の母関数を x で微分して,上と同様に考えると,
Pν+1'(x) − 2xPν'(x) + Pν-1'(x) = Pν(x) (2)
公式
Pν+1'(x) − xPν'(x) = (ν+1)Pν(x) 公式(4) (3)
(x2−1)Pν'(x) = νx Pν(x) − νPν−1(x)
xPν'(x) − Pν-1'(x) = νPν(x)
Pν+1'(x) − Pν-1'(x) = (2ν+1)Pν(x) 公式(3)
証明:
たとえば,(3) は,(1)を微分した,
(ν+1)Pν+1'(x) − (2ν+1)Pν(x) − (2ν+1)xPν'(x)+ νPν−1'(x) = 0 (1)'
から ν×(2)を引けば,
Pν+1'(x)− (2ν+1)Pν(x) − (2ν+1)xPν'(x) + 2νxPν'(x) = −νPν(x)
⇔
Pν+1'(x) − xPν'(x) = (ν+1)Pν(x)
というように得られます。 他の式の証明も簡単なので証明はこれで終しまい。
(x2−1)n= (-1)kn! ・ (x2)n-k k!(n-k)!
}