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5 ベクトル場 | |
f-denshi.com [目次へ] 最終更新日:22/04/10 校正中 | ||
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[1] 初等的なベクトル解析のベクトル場 [#] とイメージ的には同じです.
定義 ベクトル場
Cr級多様体 M上の各点 p ごとに,p における接ベクトル Xp∈Tp(M) が一つずつ対応しているとき,その対応 X , X : p → Xp (接ベクトル)を M上のベクトル場といい,X={Xp}p∈M で表す。 |
[2] 2つのベクトル場のベクトル,X={Xp}p∈M,Y={Yp} p∈M から新しいベクトル場 X+Y を次のように作ることができます。
X+Y={ Xp+Yp } p∈M ベクトル場の和
この和は任意の数のベクトル場に対して繰り返し行うことができます。
また,C∞級の関数 f : M → R とベクトル場X との ”掛け算” によってできるベクトル場を次のように定義します。
f X={f(p) Xp}p∈M ベクトル場の関数倍
f(p) は p ごとに定まる実数値をとる関数です。
[3] このとき,次の公式が成立します。
公式 ベクトル場の演算
(1) X+Y=Y+X ベクトル場の交換法則 |
そして,ベクトル場の全体集合はベクトル空間となります
証明 ゼロ元,マイナス元の存在は明らか。
[4]
m次元 Cr級多様体 M の座標近傍を (U,x1,…,xm) とするとき,U の各点 p に k番目の標準的な接ベクトル,
∂ p ∂xk
を対応させるようなベクトル場,
∂ ≡ { ∂ p } p∈U ∂xk ∂xk
を考えることができます。ここで,k=1,2,…,m をとって,(各点 p でm個の接ベクトルが1次独立であるような) m個の標準的なベクトル場を考えることができます。
すると,U上の任意のベクトル場 X={Xp}p∈M は,m個の標準的なベクトル場を「基底」として,局所座標表示することができます。
また,接ベクトル,Xp∈Tp(M) は実数 χ1,…,χm を用いて,
Xp=χ1 ∂ p +χ2 ∂ p +… +χm ∂ p .…(1) ∂x1 ∂x2 ∂xm
と書けます。
ところが,p∈M 全体 (や点でないその部分集合) を考えるときは,一般的に χk は p に依存して変化するので,局所座標の関数
χk(x1,…,xm) =χ(p) とも書く
と考えなければいけません。つまり,ベクトル場として考えるときは,上式のχk を実数値関数と見なして,( (1)式から添え字 p を落とすだけでなく )
X ={Xp}p∈M
=χ1 ∂ +χ2 ∂ +… +χm ∂ ∂x1 ∂x2 ∂xm
(関数χk(x1,…,xm) であること表すために特別に緑文字にしてますが,
ここだけのサービスで,ここ以外では色を付けません。)
とする必要があります。
[5] 以上の準備のもとで,次のように Cs級のベクトル場 を定義します。
定義 Cs級のベクトル場
Cr級多様体 M上のベクトル場 X が Cs級である(0≦s≦r-1)とは,任意の座標近傍 (U ,x1,…xm) において, と X を局所座標表示したとき,「各χkが U上の Cs級関数となる」ことである。 また,多様体 M上の C∞級のベクトル場全体の集合を |
見かけ上は,Xp の定義 (1) から p を取り除いた表記です。
[6] 微分作用素(微分演算子)としてのベクトル場を考えることもできます。
多様体上M 上の点 p の接ベクトル Xp∈Tp(M) は方向微分(演算子)でもあって,M上で定義されたCr級関数 f に作用させて,実数 Xp(f) を与えます。
したがって,p∈M に対して,
M上の関数 Xf : p → Xp(f)
を考えることができます。これは
(Xf)(p)=Xp(f) ∈R ,p∈M,
と表すことができます。関数 f にベクトル場 X を作用させて得られる関数は,f と X が与えられると一意的に定まる関数で次の関係を満たします。
命題 ⇔ 定義
M上にベクトル場 X,および,Cr級関数 f,g が与えられたとき, (1) X (af+bg) = aXf + bXg a,b∈R |
命題 (自明) であると同時にこれを満たす微分作用素をベクトル場 X と呼ぶこととします。
このとき,次の命題が成り立ちます。
命題
Cr級多様体 M上 の Cr級関数を f,および,Cs級のベクトル場を X (0≦s≦r) とするならば,関数 Xf は Cs級関数である。( 0≦r≦∞ ) |
[7] つまり,C∞級多様体 M上の C∞級ベクトル場 X を作用素とみて,M上の C∞級関数 f に作用させると,M上の C∞級関数 Xf が得られます。
X : f → Xf
∈C∞(M) ∈C∞(M)
X(f)=Xf ∈C∞
ここで,X を(2)式で与え, f に作用させると Xf は,
Xf =χ1 ∂f +χ2 ∂f +… +χm ∂f ∂x1 ∂x2 ∂xm
と表すことができます。
つづく,・・・
[1] 多様体Mの座標近傍 (Ux,x1,x2,…,xm),(Uy,y1,y2,…,ym) の共通部分 Ux∩Uy におけるベクトル場の2つの基底をそれぞれ,
∂ , ∂ ,…, ∂ ← pが付いてないことに注意 ∂x1 ∂x2 ∂xm
∂ , ∂ ,…, ∂ ∂y1 ∂y2 ∂ym
とし,M上の各点 p における座標変換の式を,
y1 = y1(x1,x2,…,xm)
y2 = y2(x1,x2,…,xm)
…
yn = yn (x1,x2,…,xm)
とすれば,これは1点 p における基底変換の式 [#] から p を除いて,
定義 ベクトル場の基底の座標変換の式
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と表すことにして,M上の任意の点で成り立つ,場の基底変換の式となります。
この式は,ユークリッド空間でのベクトルの基底変換の式
ej = qkje’k
に対応しています。
[2] 次に基底変換にともなって,成分(関数)がどのように座標変換されるか考えてみましょう。
(Ux ,x1,x2,…,xm)上,および,(Uy ,y1,y2,…,ym)上で,
X= χj ∂ ・・・ (1) ∂xj
X= ηk ∂ ・・・ (2) ∂yk
とベクトル場が表せるとき,[*] を (1) に代入して,
X = χj ∂yk ∂ ∂xj ∂yk
= ∂yk χj ∂ ∂xj ∂yk
これを (2)式と比較して,
ηk= ∂yk χj ∂xj
が得られます。
ベクトル場の成分 (関数) の座標変換の式
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これは,ユークリッド空間のベクトル(反変)成分の座標変換 (下の表の茶色部分をみよ)
x’j = qjk xk xj = Σ pjkx’k
に対応する式です。 ただし,xj は実数なのに対して,χk は p の関数 (局所座標の関数) です。
また,座標系の対称性から,
χk= ∂xk ηj ∂yj
もすぐに分かります。
参考 : ユークリッド空間上のベクトルの座標変換
ベクトル空間 V | 双対空間 V* | ||
基底 ej | 基底 ej | ||
e'j=pkjek | ej=qkje'k | e 'j=qjkek | ej=pjke 'k |
x'j=qjkxk | xj=pjkx'k | x'j=pkjxk | xj=qkjx'k |
(qkj ) は (pkj) の逆行列
記号の読み替え : ベクトル ⇒ 多様体上のベクトル場
x'j ⇒ yj ; pjk ⇒ ∂xj ; qjk ⇒ ∂yj ∂yk ∂xk
ej ⇒ ∂ ; e'j ⇒ ∂ ∂xj ∂yj
(Xf)(p)=Xp(f) ∈R ,p∈M,
X(f)=Xf ∈C∞ ,f∈C∞