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7 体Fp上の2項方程式[Fp2における解] | ![]() |
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前ページではFp上の2次方程式がFpの中に”根をもたない”こともこの問題の”答え”としました。しかし,実数(有理数)係数をもつ2次方程式が実数(有理数)の範囲に根をもたなくても,複素数の範囲まで広げて考えると必ず根を見い出せる(代数の基本定理[#])ように,この問題ももっと ”広い範囲” で根を探せば見つかるのではないかと考えられます。この章では実数(有理数)から複素数を作り出した方法を模倣することで Fp上の2次方程式が必ず根をもつようにな Fp より大きな体を構成する方法を示します。
1.体Fp2 の構成
[1] 実数係数をもつ2次方程式 x2+1=0 の根は実数の範囲には根をもちませんが,複素数の範囲まで広げると根を見つけ出せます。このとき,どのように複素数を作り出したかというと,実数に根をもたない方程式,x2=-1 の根をi (虚数)と定義し,新しく,
a+bi ← 複素数はベクトル空間:(a,b)∈R2 の元と考えることもできます。
と書ける数の集合(複素数)を考え出したのでした。
ここでも,F7に根をもたないF7上2次方程式 [#],
x2 = 3 ←右辺が 0,1,2,4 のときだけ根をもつ。(下図を見よ)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
F7の rn の計算結果 (原始根は3,5) |
の根の一つを
α (α2=3 )
を用いて,新しい数 a+bα の集合,
F72 = { a+bα|a,b ∈F7 } ← 平面を R2 と書くような感覚で F72 と書きます。
を考えます。ここで,+は単なる仕切り記号で,F72 は49個の元からできていますが,この集合は以下の演算の下で体となることが確かめられます。
↓ 新しく定義する演算:+,−,×,÷
(a+bα)+(c+dα)=(a+c)+(b+d)α
(a+bα)−(c+dα)=(a−c)+(b−d)α
(a+bα)×(c+dα)=(ac+bdt)+(ad+bc)α
(a+bα)÷(c+dα)=[(ac−bdt)/(c2−d2t)]+[(-ad+bc)/(c2−d2t)]α
(ただし,c+dα≠0,α 2 = t)
ここで,白文字の演算,+,-,/はF7での四則演算(かけ算は演算記号省略)です。(白黒の本ではこれら3種類の記号は混同して使われます。)
F72 は F7 にαを添加してできる代数拡大体 F7(α) と同じです。するとこの拡大体の中で,
(α)2=3,(2α)2=5,(3α)2=6,(4α)2=6,(5α)2=5,(6α)2=3 (mod 7) ・・・ [*]
という計算結果より,
x2−3=(x−α)(x+α)
=(x−α)(x−6α) ← 6α2=−α2=-3
と因数分解できることがわかります。
[2]
このように f(x)∈F[x] を1次の因数に分解できる体を f(x) の分解体といいます。また,αと6αは F7上同じ最小多項式 x2−3 を持っており互いに共役な根となっています。
さらに [*] をよくみると,F7 に根をもたなかった2項方程式 x2=a ( a=3,5,6 ) は,
x2=3 → 根は α と 6α
x2=5 → 根は 2α と 5α
x2=6 → 根は 3α と 4α前ページ
の結果
再掲すると,
⇒x2 = 0 → 根は 0
x2 = 1 → 根は 1 と 6
x2 = 2 → 根は 3 と 4
x2 = 4 → 根は 2 と 5
というように F72 に根をもつことがわかります。すなわち,
すべての a ∈ F7 について,x2= a は F72上に根を持つ
ことも分かりました。したがって, a=5,6 についても
x2−5=(x−2α)(x−5α)
x2−6=(x−3α)(x−4α)
のように因数分解ができます。
[3] ここで,x2−1=0 の「1以外の根」をθ,すなわち,θ=6 とおきます。このとき,方程式,x2−a=0 の根の一つを b とすると,もう一つの根は常にbθで与えられることが確かめられます。例えば,x2−2=0 の一つの根は4ですが,もう一つの根は θ=6 をこれに乗じて, 6×4=3 (mod 7) というように。
a= | 1 | 2 | 3 | 4 | ・・・ | ||||
b= | 1 | 6 | 3 | 4 | α | 6α | 2 | 5 | ・・・ |
bθ= (6b) |
6 (6×1) |
1 (6×6) |
4 (6×3) |
3 (6×4) |
6α (6×α) |
α (6×6α) |
5 (6×2) |
2 (6×5) |
・・・ |
これはもう少し一般化されて [#],
命題 |
いま調べた例は,n=2 のもっとも簡単な場合です。
証明 ⇒ [#]
[4] ここまで,体を拡大するための元α を定義するのに,α 2=3 を用いましたが,残りのF7 に根をもたない α 2 = 5,または 6 を用いたらどうでしょうか。
α12=5
α22=6
とすると,
(α1)2=5,(2α1)2=6,(3α1)2=3,(4α1)2=3,(5α1)2=6,(6α1)2=5 (mod 7)
(α2)2=6,(2α2)2=3,(3α2)2=5,(4α2)2=5,(5α2)2=3,(6α2)2=6 (mod 7)
となり,体F72 の構成に用いる元は α,α1,α2 のいずれであっても,体F7上の方程式,x2−a = 0 がF72 上に解を持つことになります。つまり,x2−3=0 の解は,3α1と4α1,もしくは,2α2,5α2と表すこともできます。実際,
x2−3=(x−α)(x−6α)
=(x−3α1)(x−4α1)
= (x−2α2)(x−5α2)
というように因数分解できます。 ( F72≡F7 (α)≡F7(α1) ≡F7(α2) )
ここの問題を解くにあたっては,この説明でも十分なのですが,他の教科書とつき合わせて勉強する人のために補足しておくと,
αの F に関する共役元が全て F の拡大体 L,([L:F]≠∞) に属すならば,L は F の正規拡大といい,さらに L が F上分離的 [#] であるとき,L を F のガロア拡大体 [#] といいます。
したがって,F7 へのα,α1,α2 による F72 への体の拡大は,いずれもガロア拡大となっています。そして,
F72≡F7 (α)≡F7(α1) ≡F7(α2)
3=α2=2(α1)2=4(α2)2
の関係が成り立っています。
[5]
一般的に,
定理: 体Fp上の2次2項方程式は拡大体Fp2 の中に必ず根をもつ。 ただし,拡大体 Fp2とは,Fp の原始根 r に関する指数が奇数である元 t をとり, α 2 = t ∈Fpとなるような数α をFp に添加してできる数の集合: Fp2 = { a+bα|a,b ∈Fp }, ←ここで「+」は単なる記号(演算ではない!) に演算: +,−,×,÷ (a+bα)+(c+dα)=(a+c)+(b+d)α を定義したものとする。 |
ここの4つの演算の定義式で問題となるのは,c,d がともに 0 でないとき,
c+dα≠ 0 ⇒ c2−d2t≠0
がいえるかどうかです。背理法で示します。
もし,c2−d2t=0 ならば,d=0 とすると,c も 0 となり仮定:c+dα≠0 に反するので,d≠0 でなければなりません。
すると,t=(c/d)2 と表せますが,これの r に関する指数をとって,
indr t =2×indr (c/d) mod (p-1)
と表せば,これは t の指数が偶数であることを示しており,仮定(tの指数数は奇数)に反します。よって,c2−d2t=0 とはならない。
(補足) さらに一般的に,
定理q = pn ( p は素数,n は自然数 ) のとき,Fq は(有限)体になる。 |
ことが分かっています。詳しくは⇒[#] このような有限体をガロア体と呼び,GF(pn) とも書きます。逆に有限体はガロア体に限ることも分かっています。
[6] さて,以上の結果を代数方程式を代数的に解くという視点から見直しておきます。ガロアが初めて気が付いたいわれる視点です。
まず,ここで示した解は,「体F7上の方程式,x2−a=0 (a=3,5,6) は体F7上では既約 」 であり,これ以上因数分解できません。ところが,新しい数α ( ただし,α2=3 ) を体 F7 に添加して作られる 「 F7 の拡大体 F72 上では可約」 となり,因数分解ができ,代数方程式を解くことができるようになりました。…ということでした。
ここで,F72上で定義される体同型写像,
σ(x)=x7
σ(x+y)=(x+y)7=x7+y7=σ(x)+σ(y) ←(x+y)p=xp+yp [mod p]
σ(xy)=x7y7=σ(x)σ(y)
を考え,この定義域を部分体,F7に制限して考えると,
σ(0)=0, σ(1)=1, σ(2)=27=2,
σ(3)=3, σ(4)=4, σ(5)=5, σ(6)=6,
というように計算できます。つまり,F7 から F7 への1対1上への写像となり, x∈F7 の元を動かさないことがわかります。このような写像σを 「F72 のZ7上の自己同型写像 (Z7上のF72自己同型写像)」 といいます。他にこれと同じ性質をもつ写像は F72上の恒等写像 e :e(x)=x しかありません。これら自己同型写像全体から構成される群,
G(F72 /F7)={ e,σ}
はガロア群と呼ばれます。この写像はF7の拡大体 F7(α) については,
α 2=3, α3=3α, α4=2, α5=2α, α6=6, α7=6α, ・・・
であることを利用して,
σ(α)=α7=6α,
σ(6α)=σ(6)σ(α)=α ←36α=α mod 7
この自己同型写像を,x2−3=(x−α)(x−6α) の両辺に作用させると,左辺の方程式を不変のままにして,右辺のF72上で得られる方程式の根αと6αを入れ替える働きがあることがわかります。
x2−5=0,x2−6=0 についても同様な働きです。この性質は一般化できて,「 L の F上の自己同型写像は,任意の F上の(2項)多項式の形を不変に保ち,その分解体 L上の根を入れ替える働きをもつ 」 とすることができます。
体を Z7 から F72 へ拡大するとき,その体 Z7 上のベクトル空間[#]からみて,体 F72 のベクトル空間としての次元は2次元となりますが,これを拡大次数が2であるといいます。ガロアの理論によれば,拡大次数とガロア群の位数が一致する時に限って,代数的に方程式を解くことができます(必要条件)。今,調べた例では,まさにそのようになっていたために代数方程式 x2−a=0 ( mod 7 ) を解くことができたのです。詳しくは次のページで説明します。
代数方程式の次数が大きくなると,添加しなければならない元の数が増えていきますが,それを一つ追加するごとの体の拡大次数と,その拡大に対応したガロア群の位数が,体の拡大の各ステップごとにおいてすべて一致するとき,その代数方程式は(べき根を用いて)代数的に解けるための必要条件の一つであることが示されます。詳しくは次のページで説明します。
[1]
n= 0 1 2 3 4 5 6 r=0 * 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 2 4 1 2 4 1 3 1 3 2 6 4 5 1 4 1 4 2 1 4 2 1 5 1 5 4 6 2 3 1 6 1 6 1 6 1 6 1 F7の rn の計算結果(原始根表)
上の表から,x3−a=0 は自明な a=0 を除いて,a=1,6 のときにF7上に解を持つことが分かります。
x3−1=(x−1)(x−2)(x−4) =x3−7x2+14x−8
x3−6=(x−3)(x−5)(x−6) =x3−14x2+63x−90
a≠0,1,6 の場合は,F7の拡大体の中に解を求めることができます。
a がそれら以外のときも2次方程式の場合と同様に考えることができます。
F72を F7 に x3−2=0 の解の一つβを添加してできる代数拡大体 F7(β)とします。
すると,この拡大体の中で,
(β)3=2,(2β)3=2,(3β)3=5,(4β)3=2,(5β)3=5,(6β)3=5 (mod 7)
という計算結果より,共役な他の根は,2β,4βと分かり,
x3−2=(x−β)(x−2β)(x−4β) = x3-7βx2 +14β2x−8β3
同時に,a=5のときの根は,3β,5β,6βと分かります。
x3−5=(x−3β)(x−5β)(x−6β) = x3-14βx2 +63β2x−90β3
[2]
今度は x3−3=0 の解の一つγを添加してできる代数拡大体 F7(γ) を考えると,まず,
(γ)3=3,(2γ)3=3,(3γ)3=4,(4γ)3=3,(5γ)3=4,(6γ)3=4 (mod 7)
という計算を行っておけば,
x3−3=(x−γ)(x−2γ)(x−4γ)
x3−4=(x−3γ)(x−5γ)(x−6γ)
と因数分解されることがわかります。
まとめて示します。
x3=1 → 根は 1, 2, 4
x3=6 → 根は 3, 5, 6
x3=2 → 根は β, 2β,4β
x3=5 → 根は 3β,5β,6β
x3=3 → 根は γ, 2γ,4γ
x3=4 → 根は 3γ,5γ,6γx3 = 0 → 根は 0
[3]
自己同型写像の性質の確認
β3=2, β4=2β, β5=2β2, β6=4, β7=4β, ・・・
自己同型写像 σ(x)=x7 により,x3−2=0 の根は,
σ(β)=β7 =4β,
σ(2β)=2・4β=β ←σ(2)=27=2 mod 7
σ(4β)=4・4β=2β
巡回的に根が入れ代わることが確かめられます。F7(β) は F7 のガロア拡大体で自己同型写像は方程式を不変に保ちます。
x3−4=0 の場合も,
γ3=3,γ4=3γ, γ5=3γ2, γ6=2, γ7=2γ,
σ(3γ)=3・2γ=6γ
σ(5γ)=5・2γ=3γ
σ(6γ)=6・2γ=5γ
と同様に自己同型写像 σ(x)=x7 により根が巡回的に入れ代わります。
a= | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||||||||||||
b= | 1 | 2 | 4 | β | 2β | 4β | γ | 2γ | 4γ | 3γ | 5γ | 6γ | 3β | 5β | 6β | 3 | 5 | 6 |
bθ= (θ=2) |
2 | 4 | 8=1 | 2β | 4β | β | 2γ | 4γ | γ | 6γ | 3γ | 5γ | 6β | 3β | 5β | 6 | 3 | 5 |
σ(b)= | 2 | 2 | 4 | 4β | β | 2β | 2γ | 4γ | γ | 6γ | 3γ | 5γ | 5β | 6β | 3β | 3 | 5 | 6 |
ただし,β=γ2 の関係がある。 ( β3=2=γ6 )
F7上の二項方程式を具体的に解いてみましょう。
4次方程式
a=1の場合 α2=3 とする
x4-1=(x2−1)(x2−6)=0
と変形すれば,
x2−1=(xー1)(x−6)
x2−6=(x−3α)(x−4α)
∴ x4-1=(x−3α)(x−4α)(x−1)(x−6)
a=2の場合
x4-2=(x2−3)(x2−4)=0
と変形して考えることができます。
(x2−3)=(x−α)(x−6α)
(x2−4)=(x−2)(x−5)
∴ x4-2=(x−α)(x−6α)(x−2)(x−5)
=(x−α)(x−α(3α)2) (x−α(3α)) (x−α(3α)3)
a=3の場合 (α3)4=3 として, (α0)2=α
x4-3=(x2−α)(x2−6α)=0
x2−α=(x−α3)(x−6α3)
x2−6α=(x−3αα3)(x−4αα3)
=(x−3α33)(x−4α33)
∴ x4-3=(x−α3)(x−6α3)(x−3α33)(x−4α33)
=(x−α3) (x−α3(3α)2) (x−α3(3α)) (x−α3(3α)3)
a=4の場合
x4-4=(x2−2)(x2−5)=0
x2−2=(x−3)(x−4)
x2−5=(x−2α)(x−5α)
a=5の場合 (α3)4=3 として, (α3)2=α
x4-5=(x2−2α)(x2−5α)=0
x2−2α=(x−3α3)(x−4α3)
x2−5α=(x−2αα3)(x−5αα3)
x4-5=(x−3α3)(x−4α3)(x−2α33)(x−5α33)
=(x−3α3) (x−3α3(3α)2) (x−3α3(3α)) (x−3α3(3α)3)
a=6の場合
x4-6=(x2−3α)(x2−4α)=0
x2−4α=(x−2α3)(x−5α3)
x2−3α=(x−αα3)(x−6αα3)
x4-6=(x−2α3)(x−5α3)(x−α33)(x−6α33)
=(x−2α3) (x−2α3(3α)2) (x−2α3(3α)3)(x−2α3(3α))
5次方程式
3次方程式の場合と同様な計算をしてみると,
δ15=1 ⇒ (2δ1)5=4,(3δ1)5=5,(4δ1)5=2,(5δ1)5=3,(6δ1)5=6 (δ1=1)
δ25=2 ⇒ (2δ2)5=1,(3δ2)5=3,(4δ2)5=4,(5δ2)5=6,(6δ2)5=5
δ35=3 ⇒ (2δ3)5=5,(3δ3)5=1,(4δ3)5=6,(5δ3)5=2,(6δ3)5=4
δ45=4 ⇒ (2δ4)5=2,(3δ4)5=6,(4δ4)5=1,(5δ4)5=5,(6δ4)5=3
δ55=5 ⇒ (2δ5)5=6,(3δ5)5=4,(4δ5)5=3,(5δ5)5=1,(6δ5)5=2
δ65=6 ⇒ (2δ6)5=3,(3δ6)5=2,(4δ6)5=5,(5δ6)5=4,(6δ6)5=1
これより,x5ーaの根を各δk (k=1,2,…,6)で表すことができます。
ただし,δk の関係は次のとおり。(δ2で表したい場合)
δ15=(2δ2)5=4δ25
δ35=(3δ2)5=5δ25
δ45=(4δ2)5=2δ25
δ55=(6δ2)5=6δ25
δ65=(5δ2)5=3δ25
n= | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
r=0 | * | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 1 | 2 | 4 | 1 | 2 | 4 | 1 |
3 | 1 | 3 | 2 | 6 | 4 | 5 | 1 |
4 | 1 | 4 | 2 | 1 | 4 | 2 | 1 |
5 | 1 | 5 | 4 | 6 | 2 | 3 | 1 |
6 | 1 | 6 | 1 | 6 | 1 | 6 | 1 |
6次方程式
x6-1=(x3−1)(x3−6)
=(x−1)(x−2)(x−4)(x−3)(x−5)(x−6)
a=2 のとき,γ16=2 ⇔ γ13=3 ⇔ γ1=γ
x6-2=(x3−3)・(x3−4)
={ (x−γ)(x−2γ)(x−4γ) }・{ (x−3γ)(x−5γ)(x−6γ) }
=(x−γ)(x−3γ)(x−2γ)(x−6γ)(x−4γ)(x−5γ)
=(x−γ)(x−3γ)(x−32γ)(x−33γ)(x−34γ)(x−35γ)
a=3 のとき, γ36=3=γ3 を導入すればよい
後は結果だけ表に示します。
xnーa の根の一覧表は次のとおりです。
a ↓ |
n=1 | n=2 | n=3 | n=4 | n=5 | n=6 |
1 | 1 | 1, 6 | 1,2,4 | 1, 3α, 6, 4α | 1, 2δ2,3δ3,4δ4,5δ5,6δ6 | 1,2,3,4,5,6 |
2 | 2 | 3, 4 | β,2β,4β | 2, 6α, 5, α | 4, δ2,5δ3,2δ4,6δ5,3δ6 | γ,3γ,2γ,6γ,4γ,5γ |
3 | 3 | α,6α | γ,2γ,4γ | α3,3α33,6α3,4α33 | 5, 3δ2, δ3,6δ4,4δ5,2δ6 | γ3,3γ3,2γ3,6γ3,4γ3,5γ3 |
4 | 4 | 2, 5 | 3γ,6γ,5γ | 2α,4, 5α,3 | 2, 4δ2,6δ3, δ4,3δ5,5δ6 | β,3β,2β,6β,4β,5β |
5 | 5 | 2α,5α | 3β,6β,5β | 3α3,2α33,4α3,5α33 | 3, 6δ2,2δ3,5δ4, δ5,4δ6 | γ5,3γ5,2γ5,6γ5,4γ5,5γ5 |
6 | 6 | 3α,4α | 3,6,5 | 2α3,6α33,5α3,α33 | 6, 5δ2,4δ3,3δ4,2δ5, δ6 | α,3α,2α,6α,4α,5α |
α2=3 ⇔ α4=2,α6=6,α8=4,α10=5,α12=1,
β3=2 ⇔ β6=4,β9=1,
γ3=3 ⇔ γ6=2,γ9=6,γ12=4,γ15=5,γ18=1
α34=3 ⇔ α32=α ⇔ α3=√α
δk5=k
γ36=3 ⇔ γ33=α,γ32=γ ⇔ γ3=√γ
γ56=5
α4= β3=γ6=δ25=2 α2=α34=3=γ36=γ3 |
[1]
体Fp上の2次の2項方程式の根の求め方が分かれば,一般の方程式,
ax2+bx+c = 0 ; a ≠ 0,b,c ∈ Fp
を Fp2 で解くことも同様な手順で進められます。先ず,a が 1でない場合は,an=1 mod p となるような n (n=2,3,・・・,6)を乗じてやれば,a=1 とすることができるので,一般性を失うことなく,
x2+B x+C = 0 ; B,C ∈ Fp
を考えれば良いことが分かります。
ここでは,具体例を用いて, F7上の2次方程式,
f(x)=x2+x+3 = 0
を考えてみましょう。xに0から6までの値を代入してみると,下図のようにf(x)≠0 なので f(x) は F7上で既約です。
x2 +x +m =f(x) x=0 0 0 3 3 1 1 1 3 5 2 4 2 3 2 3 2 3 3 1 4 2 4 3 2 5 4 5 3 1 6 1 6 3 2
そこでこの方程式の根を F7上にないαとします。このとき,
f(α)=α2+α+3 = 0 ⇔ α2=−α−3 = 6α+4
もう一つの根βは,解と係数の関係から,αβ=3
F7にαを添加した拡大体 F7(α) の 0 以外の元は,αnで与えられるが,αの1次式で表せば,
α0=1
α1=α
α2=−α−3 = 6α+4
α3=6( 6α+4)+4α=5α+3
α4=5(6α+4)+3α=5α+6
α6=5 (6α+4)+6α=α+6
α7= (6α+4)+6α =5α+4
α8=5(6α+4) +4α=6α+6
α9=6(6α+4)+6α=3
・・・・ α48 までに F7(α) の 0 以外の元48個が現れる。
これから,
αβ=3=α9
∴ β=α8
=6α+6
実際に
f(6α+6) =(6α+6)2+(6α+6)+3
=36(α2+2α+1)+6α+9
=(α2+2α+1)+6α+2
=α2+α+3
と検算して確かめることもできます。
関連する定理
定理有限体 K=GF(pn) ( p は素数,n は自然数 ) から 0 を除いた K* は巡回群となる。(位数 pnー1 の原始元 [#] が存在する。) |
メモ:
F7の拡大体 F7(α) について,
α 2=3, α3=3α, α4=2, α5=2α, α6=6, α7=6α,
α8=4, α9=4α, α10=5, α11=5α,α12=1, α13=α
したがって,σ(x)=x7 によって,
σ(α)=6α (=θα), σ(6α)=α