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Appendix クラマース・クローニッヒ変換(K-K変換) | |
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[1] 応答関数 G(τ)を用いて誘電関数を導いたときと同様に[#],電気変位 D(t) を
D(t)=ε0E(t) + ε0E(t−τ)G(τ)dτ
とおきます。 電場が,E(t)=E0・e−i ωt で与えられる場合,これを上式に代入して整理すれば,
D(t)=ε0E0e−i ωt 1+ G(τ)ei ωτ dτ
これを,D(t) =ε0εrE(t) = ε0εrE0e−i ωt と比較すれば,
εr(ω)= 1+ G(τ)ei ωτ dτ ・・・・・・・・ [*]
の関係があることがわかります。[*]は正則関数なので[#],次のような積分を実行できます。
が成り立ちます。 (1)大きい半円の半径 L が ∞ という極限を考えます。まず,(1)上の高い周波数において考察する場合,その極限では誘電体を構成する質量を持つ荷電粒子(=たいていは電子)は電場に追随できなくなるため,εr(ω) ⇒ 1 (ω→∞) と条件を課してもよいでしょう。すると,[**]の大きな半円上での積分値は 0 となります。 すると, [**]の実軸上と小円上の積分[#]だけを考えればよく,
ただし,
という関係式が得られます。さらに,便宜的に,ω0→ω ,ω→Ω と変数を改めて次のように書き直しておきましょう。 これが,複素誘電率の実数部と虚数部を関係づけている式です。 |
さらに,実数部と虚数部に分けて表示するために,
εr(ω)=ε1(ω)+i ε2(ω) ; ω=ω1+i ω2
と置きます。すると,[*]は
ε1 (ω1,ω2)= 1 + G(τ)cosω1τ・e-ω2τ dτ [実数部]
ε2 (ω1,ω2)= G(τ)sinω1τ・e-ω2τ dτ [虚数部]
と分けて書くことができます。
成分で書くために,εr(ω)=ε1(ω)+i ε2(ω) を,[***]に代入して,この積分が実軸上で行われることに注意すれば,
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が得られます。クラマース・クローニッヒ変換(K-K変換)と呼ばれます。また,
ε1(−ω)= ε1(ω)
ε2(−ω)=−ε2(ω)
を利用して,積分範囲を正の区間にまとめると,
ε2(Ω) dΩ= ε2(Ω) dΩ+ ε2(Ω) dΩ Ω−ω Ω−ω Ω−ω
= ε2(−Ω) dΩ+ ε2(Ω) dΩ −Ω−ω Ω−ω
= ε2(Ω) dΩ+ ε2(Ω) dΩ Ω+ω Ω−ω
=2 Ωε2(Ω) dΩ Ω2−ω2
および,
ε1(Ω)−1 dΩ= ε1(Ω)−1 dΩ+ ε1(Ω)−1 dΩ Ω−ω Ω−ω Ω−ω
= ε1(−Ω)−1 dΩ+ ε1(Ω)−1 dΩ −Ω−ω Ω−ω
= ε1(Ω)−1 dΩ+ ε1(Ω)−1 dΩ −Ω−ω Ω−ω
=2 ω(ε1(Ω)−1) dΩ Ω2−ω2
まとめると,
ε1(ω)−1= 2 ・P Ωε2(Ω) dΩ π Ω2−ω2
ε2(ω)=− 2 ・P ω(ε1(Ω)−1) dΩ π Ω2−ω2
複素関数εr(ω)は正則関数:
ε1(ω1,ω2)= 1+ G(τ)cosω1τ・e-ω2τdτ [実数部]
ε2(ω1,ω2)= G(τ)sinω1τ・e-ω2τdτ [虚数部]
これらから
∂ε1 = ∂ε2 ,及び, ∂ε1 =− ∂ε2 ∂ω1 ∂ω2 ∂ω2 ∂ω1
となり,複素関数εr(ω)は,複素解析学におけるコーシー・リ−マンの関係 [#] を満たしています。
小円C上の積分は,εr(ω)の正則性から,r → 0 (ω≒ω0)のとき,εr(ω)→εr(ω0) として,これを積分の外へ出すと,
εr(ω)−1 dω=(εr(ω0)−1) dω ω−ω0 ω−ω0
また,ω−ω0≡reiθ, dω=ireiθdθ とおき,変数変換すると,
= (εr(ω0)−1) i reiθdθ =−iπ(εr(ω0)−1) reiθ
のように積分できます。
追加分
n2 =εr なる関係からわかるように複素屈折率,n =n +i κ も正則な関数であり,上と同様な計算の結果,
n(ω)−1= 2 ・P sκ(s) ds π s2−ω2
κ(ω)=− 2 ・P ωn(s) ds π s2−ω2
が得られます。一方,垂直入射振幅反射率 r(θ)[#],
(1+ωs)ln r(s) ds (1+s2)(ω−s)
の積分から,( 計算は[#] )
θ(ω) = − ω ・P lnR(s)−lnR(ω) ds π s2−ω2
この式は,垂直入射パワー反射率 R(ω) から振幅反射率の位相θを求めるために使います。